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RAG のすべて ― 基礎から現在の形、そして難しさまで / 全15章

RAG 09:質問を直す ― 探す前に、質問を検索向きにする

発行
アニメモ公式
版
第1版
改訂
コマ
全14

利用者の質問が検索に向かない理由(短い・曖昧・会話の「それ」・言葉のずれ・問いの混在)と、その直し方を説明します。会話の書き直し、複数の言い換えで探すマルチクエリ、仮の答えで探す HyDE、質問の分解、索引の振り分け、日付や部署を条件に変える絞り込み、そして速さと料金のトレードオフまで。

利用者の質問は、そのまま検索に使うと外れやすい

RAG の流れは「質問 → 探す → 集める → 読ませる → 答える」です。いちばん小さな RAG(第2章)では、利用者が入力した質問を、そのまま検索に使っていました。

ところが、これがよく外れます。社内チャットで、ひとつ前に有給休暇の話をしていた利用者が、次にこう聞いたとします。

「それって何日?」

人間なら、「有給休暇が何日もらえるか」を聞いているとすぐ分かります。でも検索にとっては、「それ」「何日」という言葉しかありません。有給休暇の資料には「それ」という言葉は出てきませんし、「何日」はあらゆる資料に出てきます。当然、見当違いの資料が集まります。

第4〜7章では、「どう探すか」を強くしてきました。この章は、その手前の「何で探すか」を直す話です。図でいうと、「質問」から「検索」へ向かう矢印の上に入る工夫です。

探す前に、LLM に質問を検索向きの形に書き直させる。この一手間で、検索の当たりが大きく変わることがあります。

※2026年9月時点の情報です。手法や製品の名前、数字は変わることがあります。

  • RAG のすべて 09 ― 質問を直す
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  • 利用者の質問は、そのまま検索に使うと外れやすい
  • それって何日?
  • 集めた資料
  • 質問
  • 検索
  • LLM
  • 答え
  • 資料庫
  • 「それって何日?」で検索しても、有給休暇の資料は見つからない
  • この章は流れのいちばん最初、「質問 → 探す」の間に入る工夫の話
  • 検索に投げるのは利用者の言葉そのもの。それが短く、曖昧で、資料と言葉が違う。

質問が検索に向かない、4つの理由

利用者の質問が検索に向かない理由は、主に4つあります。

理由例何が困るか
短い・曖昧「有給」「経費」何を知りたいのか分からず、関係の薄い資料まで当たる
会話の途中「それって何日?」「それ」が何を指すか、検索には分からない
言葉が違う利用者は「有給」、資料は「年次有給休暇」同じ意味なのに、言葉が一致しない
問いが混ざる「AとBの保証、長いのはどっち?」答えが2つの資料に分かれている

3つ目の「言葉が違う」は、語彙のずれとも呼ばれ、検索の古くからの悩みです。利用者は日常の言葉で聞き、資料は正式な言葉で書かれています。「パソコンが壊れた」と聞かれても、資料の題名は「PC 故障時の手続き」かもしれません。

埋め込み(第4章)による意味の検索は、この語彙のずれにある程度強くなりました。それでも、質問が短すぎたり、「それ」のような言葉しかなかったりすると、意味の検索でも手がかりが足りません。

人は会話のつもりで聞きます。一方、検索は「資料と同じ言葉で、はっきり聞かれる」のを待っています。そのすき間を埋めるのが、この章の工夫です。

  • RAG のすべて 09 ― 質問を直す
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  • 質問が検索に向かない、4つの理由
  • 短い・曖昧
  • 会話の途中
  • 「有給」「経費」の一語だけ
  • 「それって何日?」の「それ」
  • 言葉が違う
  • 問いが混ざる
  • 利用者「有給」/資料「年次有給休暇」
  • 「AとBの保証、長いのはどっち?」
  • どれも LLM に一度書き直させるだけで、かなり良くなる
  • 人は会話のつもりで聞く。検索は、資料と同じ言葉で聞かれるのを待っている。

一言でいうと:探す前に、質問を検索向きに直す

この章の工夫は、一言でいうと「探す前に、LLM に検索用の問いを作らせる」です。

図の舞台を見てください。左が利用者の元の質問、真ん中が書き直しを担当する LLM、右が検索に使う問い、その先が検索です。この形は、この章でずっと使います。ページごとに変わるのは、左の質問と、右に出てくる問いだけです。

「有給って何日?」は、「年次有給休暇の付与日数」に書き直されました。資料で使われていそうな、正式で具体的な言葉になっています。

大事な約束が1つあります。書き直すのは、検索に使う問いだけです。最後に答えを作るときは、利用者の元の質問をそのまま LLM に見せます(第8章)。書き直しの途中で意味が少しずれることがあるので、答えまでずれた問いで作ると、利用者の聞きたかったことからずれてしまうからです。

この考え方は、2023年の論文で「Rewrite-Retrieve-Read」(書き直す → 探す → 読む)と名付けられて整理されています。RAG の基本形「探す → 読む」の前に、書き直しを1段足した形です。

  • RAG のすべて 09 ― 質問を直す
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  • 一言でいうと:探す前に、質問を検索向きに直す
  • 元の質問
  • 有給って 何日?
  • LLM で直す
  • 年次有給休暇の付与日数
  • 検索
  • 書き直すのは「検索に使う問い」だけ
  • 答えを作るときは、元の質問をそのまま LLM に見せる
  • LLM に「検索に使う問い」を作らせてから探す。答えを作る LLM とは別の、小さな仕事。

会話の書き直し:「それ」を具体的な言葉に戻す

チャット形式の RAG では、この書き直しがほぼ必須です。会話の2回目以降の質問は、たいてい前の会話を前提にしているからです。

図の上に、会話の履歴があります。利用者は最初に有給休暇について聞き、AI が答え、次に「それって2年目だと何日?」と聞きました。この質問を単独で検索しても、有給休暇の資料は見つかりません。

そこで、直前の会話と今の質問を LLM に渡し、それだけで意味が通る1文に書き直させます。結果は「入社2年目の年次有給休暇の付与日数」。これなら検索できます。

会話の書き直しでは、次の点に気をつけます。

気をつけること理由
履歴は直近の数往復に絞る長すぎると遅く高くなり、古い話題に引きずられる
話題が変わったら履歴を使わない「ところで経費は?」に有給の話を混ぜない
書き直す必要がなければそのまますでに十分具体的な質問は、いじらないほうが安全

この処理は、会話の要約(condense=ぎゅっと縮める)と呼ばれることもあります。多くの RAG のライブラリに、会話の履歴を踏まえて質問を書き直す部品が用意されています。

  • RAG のすべて 09 ― 質問を直す
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  • 会話の書き直し:「それ」を具体的な言葉に戻す
  • 利用者:有給休暇について教えて
  • AI:入社6か月後に10日付与されます [1]
  • 利用者:それって2年目だと何日?
  • 元の質問
  • それって 2年目だと何日?
  • LLM で直す
  • 入社2年目の 年次有給休暇の付与日数
  • 検索
  • 「それ」のまま探すと、何の資料も当たらない
  • 会話の履歴は長すぎないよう、直近の数往復に絞る
  • 直前までの会話を読ませ、1文で意味の通る問いにしてから探す。チャットでは必須。

複数の言い方で探す(マルチクエリ)

マルチクエリは「複数(マルチ)の問い(クエリ=検索に使う問いのこと)」という意味です。言葉のずれに対する、もう1つの手は「1つの言い方に賭けない」ことです。

LLM に、同じ意味の問いを複数(たとえば3つ)作らせます。図では「年次有給休暇の付与日数」「有給 何日 もらえる」「年休 入社初年度 日数」の3つです。資料が正式な言葉で書かれていても、くだけた言葉で書かれていても、どれかが当たりやすくなります。

3つの問いでそれぞれ検索すると、3つの結果の一覧ができます。これを1つにまとめるには、第6章で見た RRF(順位の逆数を足し合わせる方法)が使えます。複数の問いで何度も上位に出てくる資料ほど、本当に関係がありそうだ、という考え方です。この組み合わせは「RAG-Fusion」という名前で紹介されることもあります。

良い点悪い点
1つの言い方では拾えない資料を拾える検索の回数が問いの数だけ増える
変な問いが1つ混ざっても、合わせれば薄まる問いを作る LLM の呼び出しが1回増える

検索は並行して実行できるので、時間はそれほど増えないこともあります。ただ、料金や検索エンジンの負荷は、問いの数だけ増えます。

  • RAG のすべて 09 ― 質問を直す
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  • 複数の言い方で探す(マルチクエリ)
  • 年次有給休暇の付与日数
  • 元の質問
  • 有給って 何日?
  • LLM で直す
  • 有給 何日 もらえる
  • 検索
  • 3つの結果は順位を合わせて1つにする(第6章の RRF)
  • 年休 入社初年度 日数
  • 検索の回数は3倍。拾い漏れは減るが、遅く高くなる
  • 1つの言い方に賭けず、言い換えを3つ作って探し、結果を合わせる。

HyDE:仮の答えを書かせて、その文で探す

少し意外な方法があります。質問で探すのではなく、LLM に仮の答えを書かせて、その答えの文で探すのです。

この方法は HyDE(Hypothetical Document Embeddings、仮の文書の埋め込み。「ハイド」と読まれます)と呼ばれ、2022年に論文で発表されました。仮の答えを第4章の埋め込みで意味の地図の点にし、その点の近くにある本物の資料を探す、という流れです。

なぜこれが効くのでしょうか。資料は「答えの形」で書かれています。「入社6か月後に10日の年次有給休暇を付与する」のように。一方、質問は「有給って何日?」という「問いの形」です。意味の検索(第4・5章)では、形の似た文どうしのほうが近くなりやすいので、問いより仮の答えのほうが、本物の資料に近づけるのです。

大事なのは、仮の答えの中身は間違っていてよいことです。LLM はこの会社の規程を知らないので、「半年で10日」かもしれないし「20日」と書くかもしれません。でも、探すための「えさ」として使うだけなので、中身が正しい必要はありません。答えそのものは、見つかった本物の資料から作ります。

弱点もあります。仮の答えを書かせる時間がかかります。また、LLM が全く知らない分野(社内の独自の用語など)では、的外れな仮の答えになり、かえって外れることがあります。自分の資料で効くかどうかは、評価(第12章)で確かめます。

  • RAG のすべて 09 ― 質問を直す
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  • HyDE:仮の答えを書かせて、その文で探す
  • 元の質問
  • 有給って 何日?
  • LLM で直す
  • (仮の答え)入社して半年 たつと有給休暇が付与…
  • 検索
  • 資料は「答えの形」で書かれている。質問の形ではない
  • 仮の答えの数字は信じない。探すための「えさ」にするだけ
  • 質問より「答えの文」のほうが、資料の文に似ている。中身は間違っていてよい。

分解:1つの質問を、探せる小さな問いに分ける

「A製品とB製品、保証期間が長いのはどっち?」という質問を考えます。答えるには、A製品の保証期間と、B製品の保証期間の両方が必要です。でも、この2つはたいてい別々の資料(それぞれの製品マニュアル)に書かれています。

1回の検索では、片方の資料しか上位に来ないかもしれません。そこで、LLM に質問を小さな問いに分解させます。「A製品の保証期間」と「B製品の保証期間」。それぞれで探し、見つかった資料を両方まとめて LLM に渡せば、比べて答えられます。

分解が効く質問には、いくつかの形があります。

形例
比べるA と B、どちらが長い/安い?
並べる3つの拠点それぞれの営業時間は?
つなぐ私の部署の申請先は?(「私の部署」と「部署ごとの申請先」)

最後の「つなぐ」形は、少し難しくなります。1つ目の答え(私の部署はどこか)が分からないと、2つ目の問いが作れないからです。このように、答えを順にたどる必要がある質問は多段の質問(マルチホップ=何度か飛び石を渡るように答えをたどる)と呼ばれます。探した結果を見てから次の問いを考える必要があるので、最初に一度分解するだけでは足りません。これは第11章のエージェント型 RAG で扱います。

  • RAG のすべて 09 ― 質問を直す
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  • 分解:1つの質問を、探せる小さな問いに分ける
  • 元の質問
  • A製品の保証期間
  • AとB、保証が 長いのはどっち?
  • LLM で直す
  • 検索
  • B製品の保証期間
  • 2つの問いで別々に探し、両方の資料を LLM に渡す
  • 前の答えを見ないと次を聞けない問いは、第11章で扱う
  • 答えが2か所以上に分かれている質問は、1回の検索では集めきれない。

振り分け:どこを探すか、そもそも探すか

資料がたくさんあると、索引(第5・6章で見た、速く探すための仕組み。ここでは「探す対象の資料のまとまり」くらいに考えてください)を種類ごとに分けることがあります。社内規程の索引、製品マニュアルの索引、過去の問い合わせ履歴の索引、といった具合です。

そうすると、「この質問はどの索引を探すべきか」を決める必要が出てきます。これが振り分け(ルーティング)です。図では、「ノートPCの保証は何年?」を、製品マニュアルの索引に振り分けています。

振り分けには、もう1つ大事な役目があります。探さないという判断です。

質問振り分け先
ノートPCの保証は何年?製品マニュアルの索引
出張の日当はいくら?社内規程の索引
ありがとう、助かった探さない(そのまま返事)
120の15%はいくつ?探さない(計算)

「ありがとう」で検索しても、関係ない資料が集まり、LLM がそれに引きずられて変な返事をするだけです。探す必要のない質問は、探さないほうが速く、正確です。

振り分けは、LLM に「次のどれに当たるか」を選ばせる方法が手軽です。弱点は、振り分けを間違えると、正しい索引を一度も探さないことです。迷ったら複数の索引を探す、という逃げ道を用意しておくと安全です。

  • RAG のすべて 09 ― 質問を直す
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  • 振り分け:どこを探すか、そもそも探すか
  • 製品マニュアルの索引
  • 元の質問
  • ノートPCの 保証は何年?
  • 振り分け
  • 社内規程の索引
  • 検索
  • 索引を分けると、関係ない資料が混ざりにくい
  • 探さない(雑談・計算)
  • 「ありがとう」に検索は要らない。遅く、的外れになるだけ
  • 質問の種類を見て、行き先の索引を選ぶ。探さなくてよい質問もある。

絞り込み:「去年」を日付の条件に変える

「去年の営業部の経費精算の締め日は?」という質問を考えます。

意味の検索は、「去年」や「営業部」を条件として扱うのが苦手です。「去年」という言葉の意味に近い資料を探しても、2025年の資料だけが出てくるわけではありません。2019年の資料も、2026年の資料も、同じように並びます。

そこで、質問から条件を取り出して、絞り込みに変えます。

質問の中の言葉変換後
経費精算の締め日検索に使う問い
去年条件:年 = 2025
営業部条件:部署 = 営業

多くのベクトルデータベースは、資料に付けたメタデータ(年・部署・製品名などの付加情報)で絞り込みながら検索できます(第5章)。条件で候補を先に絞れば、別の年や別の部署の資料が混ざりません。

2つ注意があります。1つ目は、「去年」を年に直すには、今日の日付を LLM に渡す必要があることです。渡さないと、LLM は学習したころの年を基準に、当てずっぽうで決めてしまいます。2つ目は、条件に使う項目を、資料の側にも持たせておく必要があることです。資料に年や部署が付いていなければ、絞り込めません。これは資料を準備する段階(第3章)の仕事です。

  • RAG のすべて 09 ― 質問を直す
  • 9 / 14
  • 絞り込み:「去年」を日付の条件に変える
  • 今日:2026-09-24
  • 元の質問
  • 検索:経費精算 締め日
  • 去年の営業部の 経費の締め日は?
  • LLM で直す
  • 検索
  • 条件:年 = 2025 部署 = 営業
  • 「去年」を年に直すには、今日の日付を LLM に渡す
  • 条件に使える項目は、資料側にも持たせておく(第3章)
  • 日付・部署・製品名は、意味の検索ではなく、条件の絞り込みで効かせる。

作ってみる:書き直しを1回の呼び出しで

ここまでの工夫は、別々の LLM 呼び出しにすると遅くなります。実際には、1回の呼び出しで、まとめて作らせることが多いです。

図のコードは、その形を説明用に書いたものです(llm.json・searchAll・generate は仮の関数です)。

渡すもの返してもらうもの
今日の日付検索に使う問い(最大3つ)
直近の数往復の会話年などの条件(無ければ null)
今の質問

返してもらう形を JSON で決めておく(第8章の構造化出力)と、プログラムでそのまま使えます。

Python で、同じ流れを短く書くと次のようになります。

python
plan = llm_json(
    system=f"検索に使う問いを作る係です。今日は {today} です。",
    input={"history": history[-6:], "question": question},
    schema={"queries": "list[str]", "year": "int | None"},
)
hits = search_all(plan["queries"], year=plan["year"])
answer = generate(question, hits)  # 答えには元の質問を渡す

1行ずつ読むと、こうです。1つ目の llm_json(…) は、LLM に「今日の日付」と「直近6発言(3往復)の会話」と「今の質問」を渡し、検索用の問いの一覧(queries)と年の条件(year、無ければ None)を決まった形で返してもらいます。2つ目の search_all(…) は、その問いを全部使い、年で絞って探します。3つ目の generate(…) で答えを作ります。

最後の行に注目してください。答えを作るときには、書き直した問いではなく、元の質問を渡しています。

書き直しは、答えを作るほどの賢さは要らない、比較的やさしい仕事です。そのため、答えを作るモデルより小さく速いモデルで十分なことが多く、時間と料金を抑えられます。

  • RAG のすべて 09 ― 質問を直す
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  • 作ってみる:書き直しを1回の呼び出しで
  • const plan = await llm.json({
  • system: "検索に使う問いを作る係です。今日は " + today,
  • input: { history: last3Turns, question },
  • schema: { queries: "string[](最大3つ)", year: "number | null" },
  • });
  • const hits = await searchAll(plan.queries, { year: plan.year });
  • const answer = await generate(question, hits); // 答えには元の質問
  • llm.json・searchAll・generate は説明用の仮の関数
  • 会話と今日の日付を渡し、検索に使う問いと条件を JSON で返させる。

限界とトレードオフ:1回ぶん遅く、高くなる

何かを得れば何かを払う、という取り引き(トレードオフ)を見ます。質問を直す工夫には、共通の代償があります。LLM の呼び出しが1回増えることです。利用者から見ると、答えが返ってくるまでの時間が、その分だけ延びます。

それぞれの技の、得るものと払うものを並べます。

技得るもの払うもの
会話の書き直し2回目以降の質問が探せる小さな呼び出し1回
マルチクエリ言い方の違いによる拾い漏れが減る検索の回数が増える
HyDE問いと答えの形のずれを埋める仮の答えを書く時間。知らない分野では逆効果も
分解比べる・並べる質問に答えられる問いの数だけ検索が増える
振り分け・絞り込み的外れな資料が減る判定を間違えると取りこぼす

どれを使うかは、「どんな質問が多いか」で決めます。チャット形式なら会話の書き直しはほぼ必須です。比べる質問が多いなら分解、日付の条件が多いなら絞り込み、というように、困っている失敗に合わせて選びます。全部を重ねると、1つの質問に何秒もかかるようになります。

効いたかどうかは、書き直しの前と後で、「正しい資料が上位に入った割合」を比べて確かめます(第12章)。

  • RAG のすべて 09 ― 質問を直す
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  • 限界とトレードオフ:1回ぶん遅く、高くなる
  • 会話の書き直し
  • チャットならほぼ必須。1回の小さな呼び出し
  • マルチクエリ
  • 拾い漏れが減る。検索の回数が増える
  • HyDE
  • 言葉のずれに強い。仮の答えを書く時間がかかる
  • 分解
  • 比べる質問に効く。問いが増えるほど遅い
  • 振り分け・絞り込み
  • 的外れを減らす。分類の間違いで取りこぼす
  • 書き直しには、答えを作るのより小さく速いモデルで足りることが多い
  • 書き直しは LLM の呼び出しが1回増える。速さ・料金と、拾い漏れの減り方を比べて選ぶ。

よくある落とし穴

質問を直す工夫で、よく起きる失敗をまとめます。

落とし穴何が起きるか対策
意味が変わる「去年」が今年に、「〜しない場合」の否定が消える書き直しの結果を記録し、見直す
答えまで書き直した問いで作る利用者の聞き方とずれた答えになる答えには元の質問を渡す
日付を渡さない「先月」「去年」を当てずっぽうで決める今日の日付を必ず渡す
振り分けの間違い正しい索引を一度も探さない迷ったら複数を探す
技の重ねすぎ1問に何秒もかかる困っている失敗に合う技だけ使う

いちばん気づきにくいのは、1つ目の「意味が変わる」です。書き直しの結果は利用者の画面に出ないので、誰も気づかないまま、的外れな検索が続きます。

書き直した問いをログ(記録)に残し、ときどき人が見る習慣を付けましょう。元の質問と書き直した問いを並べて眺めるだけで、「この種類の質問はいつも意味が変わっている」といった癖が見えてきます。

  • RAG のすべて 09 ― 質問を直す
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  • よくある落とし穴
  • 書き直しで意味が変わる(「去年」を今年にする・否定が消える)
  • 書き直した問いを答えの生成にも使い、利用者の聞き方とずれる
  • 今日の日付を渡さず、「去年」「先月」を LLM が当てずっぽうで決める
  • 振り分けを間違えると、正しい索引を一度も探さない
  • 全部の技を重ねて、1問に何秒もかかる
  • 書き直しは意味を変えることがある。元の質問を捨てず、結果を測って確かめる。

他の章とのつながり

この章の工夫は、「探す」の入口にあたります。他の章との関係をまとめます。

章つながり
第3章 文書の準備絞り込みに使う年・部署などを、資料の側に持たせておく
第4・5章 埋め込みとベクトル検索HyDE は「似た形の文ほど近い」という性質を利用する
第6章 ハイブリッド検索マルチクエリの結果を RRF で合わせる
第8章 プロンプトと生成答えには元の質問を渡す。書き直しの結果は JSON で受け取る
第11章 エージェント型 RAG探した結果を見て、次の問いを考える。多段の質問に強い
第12章 評価書き直しで、本当に正しい資料が上位に来るようになったか

特に第11章とのつながりは深いです。この章の書き直しは、「探す前に一度だけ」問いを作ります。第11章のエージェント型 RAG では、LLM が探した結果を読んでから、次に何を探すかを決めることを繰り返します。分解の「つなぐ」形のような、一度では問いを作りきれない質問に向いています。

  • RAG のすべて 09 ― 質問を直す
  • 13 / 14
  • 他の章とのつながり
  • 第6章 ハイブリッド検索
  • 第8章 プロンプトと生成
  • 複数の結果を合わせる RRF
  • 答えには元の質問を渡す
  • 第11章 エージェント型 RAG
  • 第12章 評価
  • 探しながら次の問いを考える
  • 書き直しで本当に当たりが増えたか
  • 質問を直すのは「探す」の入口の工夫。探し方(第4〜7章)と組み合わせて効く。

まとめ:質問を、資料の言葉に近づけてから探す

この章で見たことをまとめます。

項目要点
なぜ要るか質問は短く曖昧で、会話の「それ」を含み、資料と言葉が違う
基本の形探す前に、LLM に検索用の問いを作らせる。答えには元の質問を使う
会話の書き直し直近の会話を読ませ、単独で意味の通る問いにする
マルチクエリ言い換えを複数作って探し、RRF で合わせる
HyDE仮の答えを書かせ、その文で探す。中身は間違っていてよい
分解答えが複数の資料にある質問を、小さな問いに分ける
振り分けどの索引を探すか、そもそも探すかを決める
絞り込み日付・部署などは条件に変える。今日の日付を渡す
代償LLM の呼び出し1回ぶんの時間と料金。困っている失敗に合う技だけ使う

質問を直す工夫は、「探す側」から資料に歩み寄る工夫でした。次の第10章では、逆に資料の側から質問に歩み寄る工夫、つまり索引の作り方を変える方法(親子チャンク、要約の索引、GraphRAG など)を見ていきます。

  • RAG のすべて 09 ― 質問を直す
  • 14 / 14
  • まとめ:質問を、資料の言葉に近づけてから探す
  • なぜ要るか
  • 質問は短く曖昧で、資料と言葉が違う
  • 会話の書き直し
  • 「それ」を具体的な言葉に戻す
  • マルチクエリ・HyDE
  • 言い換えや仮の答えで、言葉のずれを埋める
  • 分解
  • 答えが2か所以上にある質問を分けて探す
  • 振り分け・絞り込み
  • 索引を選び、日付や部署は条件にする
  • 代わりに払うもの
  • LLM の呼び出し1回ぶんの時間と料金
  • 会話の書き直し・言い換え・仮の答え・分解・振り分け・絞り込み。次章は資料の側の工夫。

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