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メールのしくみ ― DNS から SPF・DKIM・DMARC、Resend の運用まで / 全11章

メールのしくみ 8:評判 ― 本物でも届かない理由

発行
アニメモ公式
版
第1版
改訂
コマ
全12

SPF・DKIM・DMARC がすべて合格しても迷惑メールフォルダに入るのはなぜか。受け取る側が付けている「評判」の点数が、どこに付き、何で下がるのか(バウンス・苦情・急な大量送信・中身)を説明します。共有の送信元、取引メールと宣伝メールの分け方、2024年の送信者要件、評判の見方まで。

身元が本物でも、届くとは限らない

5〜7本目で、SPF・DKIM・DMARC の3つがそろえば「画面に出ている差出人は本物」と言える、と説明しました。

ところが、それで分かるのは「このメールは、名乗っているドメインの持ち主が送った」ということだけです。「迷惑をかけない送り手である」ことの証明にはなりません。

図の送り手は、自分で spam.example というドメインを買い、3つとも正しく設定しています。すべて合格です。それでも、送っているのは誰も頼んでいない広告メールです。身元確認は、迷惑メールを送る業者にも簡単にできてしまいます。

だから受け取る側は、身元とは別の物差しを持っています。それが評判(レピュテーション)です。この作品では、その評判がどう付けられ、何で下がり、どう守ればよいのかを見ていきます。

  • メールのしくみ 8 / 11 ― 評判:本物でも届かない理由
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  • 身元が本物でも、届くとは限らない
  • 広告を大量に送る人
  • SPF
  • spam.example(自分のドメイン)
  • DKIM
  • DMARC
  • 3つとも合格。それでも迷惑。
  • 身元確認が示すのは「本人である」ことだけ。「迷惑をかけない」ではない。

受け取る側は、送り手の過去の行いを点数にしている

Gmail などの受け取る側は、送り手ごとに過去の行いを点数のように管理しています。点数の付け方は公開されていませんが、何が効くかはおおよそ分かっています。

点が上がるのは、受け取った人が迷惑メールとして報告しない、宛先がちゃんと実在する、送る量が急に跳ね上がらずなだらかに増えていく、といった送り手です。点が高い送り手のメールは、受信トレイに入りやすくなります。

ここで、身元確認の意味をもう一度考えてみます。身元が確かでなければ、悪い送り手は他人の名前を借りて、よい評判を横取りできてしまいます。また、評判が下がったら名前を変えて逃げることもできます。身元確認は、この点数を「誰に付けるか」を確かにするためのものでもあるのです。

  • メールのしくみ 8 / 11 ― 評判:本物でも届かない理由
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  • 受け取る側は、送り手の過去の行いを点数にしている
  • 評判の点数(送信元IP・ドメインごと)
  • 受信トレイへ
  • 迷惑メール扱いされない・宛先が実在する・量がなだらか
  • 身元確認は「この点数を誰に付けるか」を確かにするためのもの
  • 点が高い送り手は受信トレイへ。低い送り手は迷惑メールへ。

点が付くのは2か所:送信元の番号と、ドメイン

評判の点が付くのは、大きく分けて2か所です。

点が付く先例誰が守るか
送信元の IP アドレスAmazon SES の送信サーバーの番号送信サービス(Resend)
ドメインmail.animemo.app自分

以前は番号の評判が中心でしたが、今はドメインの評判が大きな比重を占めています。番号は送信サービスごとに変わりますが、ドメインは送り手そのものだからです。

大事なのは、送信サービスを乗り換えても、ドメインの評判はついてくるということです。評判を落としたドメインで別のサービスに移っても、受け取る側はそのドメインを覚えています。逆に言えば、自分のドメインの評判は、自分の送り方でしか守れません。

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  • 点が付くのは2か所:送信元の番号と、ドメイン
  • 送信元IPの評判(例: Amazon SES の番号)
  • 送信サービスが管理
  • ドメインの評判(例: mail.animemo.app)
  • 自分の送り方で決まる
  • 送信サービスを替えても、ドメインの評判はついてくる
  • 番号の評判は送信サービスが守る。ドメインの評判は自分が守る。

減点①:存在しない宛先へ送る(バウンス)

1つ目の減点は、存在しない宛先へ送ることです。3本目で見たとおり、届かなかったメールは「バウンス」として戻ってきます。

なぜこれが減点になるのでしょうか。どこかから名簿を買って、適当なアドレスに大量に送る業者は、存在しない宛先の割合が高くなるからです。受け取る側から見ると、バウンスが多い送り手は「名簿をきちんと管理していない=怪しい」送り手です。

バウンスには2種類あります。

種類意味対応
ハードバウンスアドレスが存在しない(5xx)すぐに送り先から外す。二度と送らない
ソフトバウンス一時的に受け取れない(受信箱が満杯など、4xx)様子を見て、続くようなら外す

Animemo のように「登録確認」や「招待」を送るサービスでは、利用者が打ち間違えたアドレスへのバウンスが起きます。それ自体は避けられませんが、同じ宛先へ送り続けないことが大切です(11本目で、その仕組みを見ます)。

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  • 減点①:存在しない宛先へ送る(バウンス)
  • 評判の点数(送信元IP・ドメインごと)
  • ハードバウンス:アドレスが存在しない(5xx)
  • ハードは即座に 送り先から外す。 ソフトは様子を見て、 続くなら外す。
  • ソフトバウンス:一時的に受け取れない(4xx・満杯など)
  • 名簿を買って適当に送る業者の特徴だから。届かなかった宛先には二度と送らない。

減点②:「迷惑メール」ボタンを押される(苦情)

2つ目の減点は、受け取った人に「迷惑メール」ボタンを押されることです。これを苦情(コンプレイント)と呼びます。

受け取った本人が「このメールはいらない」とはっきり言っているので、いちばん重い減点になります。

Gmail は、迷惑メールとして報告される割合を 0.3% 未満に保つよう求めています。1,000通送って3人が押したら、もう限界です。目標としては 0.1% 未満(1,000通で1人)が勧められています。

押されやすいのは、次のようなメールです。受け取った人が自分で登録した覚えがないメール。止め方が分からないメール(配信停止のリンクが見つからないと、迷惑メールボタンで止めようとします)。何のメールか分からない件名や送り手名のメール。

登録確認のように、利用者が自分の操作で受け取るメールは押されにくいですが、送り手の名前(From: の表示名)や件名で、何のメールかすぐに分かるようにしておくことは大切です。

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  • 減点②:「迷惑メール」ボタンを押される(苦情)
  • 評判の点数(送信元IP・ドメインごと)
  • 0.3%
  • Gmail が示す上限。1,000通送って3人が押したら、もう限界
  • 目標は 0.1% 未満(1,000通で1人)
  • 身に覚えのないメール・止め方が分からないメールが押される
  • 受け取った本人が「いらない」と言っている。いちばん重い減点。

減点③:新しいドメインから、急に大量に送る

3つ目の減点は、新しいドメインから、急に大量に送ることです。

迷惑メールの業者は、ドメインを買ってはすぐに大量送信し、評判が落ちたら捨てて次のドメインに移る、ということを繰り返します。受け取る側から見ると、「最近できたばかりのドメインが、昨日まで0通だったのに今日いきなり1万通」は、その典型的な形です。

そこで、新しいドメインや新しい送信元から送り始めるときは、少しずつ送る量を増やすのが定石です。これをウォームアップと呼びます。最初は少量から始め、問題が出ないことを確かめながら、数週間かけて増やしていきます。

Animemo の登録確認メールのように、利用者の登録に合わせて自然に増えていくメールは、ほぼ自然なウォームアップになります。注意したいのは、既存の利用者全員にお知らせを一斉送信するような場面です。新しいドメインでいきなりそれをやると、評判を大きく落とします。

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  • 減点③:新しいドメインから、急に大量に送る
  • 急に増やす
  • 少しずつ増やす
  • 1日目  →  5日目
  • 1日目  →  5日目
  • 使い捨てのドメインで一気に送るのは業者の典型。少しずつ増やす(ウォームアップ)。

Resend の送信元は、多くの送り手で共有している

Resend のような送信サービスでは、送信元の IP アドレスを多くの送り手で共有するのが普通です。

共有には利点があります。新しい番号には評判がありませんが、共有の番号は大勢が毎日きちんと送っているので、最初から評判が高い状態で使えます。一方で、同じ番号を使う別の送り手が迷惑メールを送れば、番号の評判は下がります。そのため送信サービスは、送り手を審査し、バウンスや苦情が多い送り手を止めて、共有の番号の評判を守っています。

大量に送る送り手向けには、専用の番号を選べるサービスもあります。専用の番号では、他の送り手の影響を受けない代わりに、自分の送り方がそのまま評判になります。送る量が少ないうちは、共有の番号のほうが有利です。

どちらの場合も、前のページで見たとおり、ドメインの評判は自分で守る必要があります。

  • メールのしくみ 8 / 11 ― 評判:本物でも届かない理由
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  • Resend の送信元は、多くの送り手で共有している
  • 共有の送信元IP
  • Resend が管理・監視
  • あなた
  • 送り手B
  • 送り手C
  • 大量に送るなら専用の番号も選べる(自分の送り方がそのまま評判になる)
  • 共有の番号の評判は Resend が守る。自分のドメインの評判は自分で守る。

本文の中身も見られている

評判とは少し違いますが、受け取る側はメールの中身も見ています。身元が本物でも、中身が迷惑メールのように見えれば減点されます。

減点されやすい中身の例です。表示された文字とリンクの行き先が違うリンクや、短縮 URL。画像1枚だけで、文字がほとんど無い本文。HTML の版だけで、文字だけの版(テキスト版)が無いメール。

逆に、よい印象を与える中身の例です。冒頭で、何のメールか、なぜ届いたかが分かる。送り手の表示名が、From: のドメインと食い違っていない(「Animemo」から @mail.animemo.app で届く)。

Animemo の手順書には、招待メールの本文に「招待先、招待者、有効期限、心当たりがない場合は無視できること」を書き、行動ボタンを1つに絞る、とあります。これは、受け取った人が安心できるだけでなく、迷惑メールと判定されにくくするためでもあります。

  • メールのしくみ 8 / 11 ― 評判:本物でも届かない理由
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  • 本文の中身も見られている
  • 表示と行き先が違うリンク・短縮 URL
  • 画像1枚だけで文字がほとんど無い
  • HTML だけで文字だけの版が無い
  • 何のメールか、なぜ届いたかが最初に分かる
  • 送り手の名前と From のドメインが一致している
  • 怪しい見た目のメールは、身元が本物でも減点される。

取引のメールと宣伝のメールは、ドメインを分ける

メールには大きく2つの種類があります。

種類例性質
取引メール(トランザクションメール)登録確認、パスワード再設定、招待、購入の控え利用者の操作で届く。止められると困る
宣伝メール(マーケティングメール)お知らせ、キャンペーンこちらの都合で送る。苦情が出やすい

この2つを同じドメインから送ると、評判を共有してしまいます。宣伝メールで苦情が増えてドメインの評判が落ちると、パスワード再設定のメールまで迷惑メールフォルダに入るようになります。利用者はログインできなくなります。

そこで、サブドメインを分けて送ります。取引メールは mail.animemo.app、宣伝メールは news.animemo.app、のようにしておけば、片方の評判が落ちても、もう片方は巻き込まれません。10本目で「送信にはサブドメインを使う」と説明する理由の1つがこれです。

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  • 取引のメールと宣伝のメールは、ドメインを分ける
  • mail.animemo.app
  • news.animemo.app
  • 登録確認・パスワード再設定・招待
  • お知らせ・キャンペーン
  • 片方の評判が落ちても、もう片方は巻き込まれない
  • 宣伝で評判を落としても、ログインに必要なメールは巻き込まない。

2024年から、Gmail と Yahoo は条件を明文化した

2024年2月から、Gmail と Yahoo は「こういう送り手のメールしか受け取らない」という条件を公表し、厳しく運用し始めました。

対象主な条件
すべての送り手SPF か DKIM を設定する。通信を暗号化する。送信元の番号に正しい逆引きの名前を付ける。苦情率を 0.3% 未満に保つ
1日に5,000通以上送る送り手SPF と DKIM と DMARC をすべて設定し、From: と揃える。宣伝などのメールにはワンクリックで配信停止できる仕組みを付ける

暗号化や逆引きの名前は、Resend のような送信サービスが対応しているので、こちらで何かする必要はありません。こちらがやるのは、SPF・DKIM・DMARC の設定と、苦情率を低く保つ送り方です。

Animemo の登録確認メールは、今のところ前者に当たります。それでも、3つとも入れておくのが今の実質的な前提です。条件はこれからも厳しくなる方向で、後から足すより最初から入れておくほうが楽です。

なお、登録確認やパスワード再設定のような取引メールには、配信停止のリンクは要りません。

  • メールのしくみ 8 / 11 ― 評判:本物でも届かない理由
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  • 2024年から、Gmail と Yahoo は条件を明文化した
  • Gmail・Yahoo の送信者要件(2024年〜)
  • すべての送り手
  • SPF か DKIM・苦情率 0.3% 未満・暗号化・正しい逆引き
  • 1日5,000通以上
  • SPF と DKIM と DMARC(From と揃える)・ワンクリック解除
  • → 小さな送り手も、3つとも設定しておくのが今の前提
  • 設定しなくても届いていた時代は終わった。3つとも入れるのが前提。

自分の評判は、Gmail の管理ツールで見られる

評判の点数そのものは公開されていませんが、Gmail については、自分のドメインの様子を見る道具があります。Google Postmaster Tools です。

自分のドメインを登録すると、Gmail あてに送ったメールについて、次のようなことが分かります。

見られるもの意味
迷惑メール率受け取った人が迷惑メールとして報告した割合
ドメインの評判高・中・低などの目安
認証の結果SPF・DKIM・DMARC に合格した割合

登録するときには、「このドメインの持ち主であること」を示すために、DNS に確認用の TXT を1行足します。2本目で見た「DNS は持ち主しか書けない」が、ここでも持ち主の証明に使われています。

ある程度の量を Gmail に送るようになったら、登録しておくと、評判が落ち始めたことに早く気づけます。

  • メールのしくみ 8 / 11 ― 評判:本物でも届かない理由
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  • 自分の評判は、Gmail の管理ツールで見られる
  • Google Postmaster Tools(mail.animemo.app)
  • 迷惑メール率 0.02%
  • ドメインの評判 高
  • 認証(SPF・DKIM・DMARC) 100% 合格
  • 登録には DNS に確認用の TXT を1行足す(ここでも「持ち主の証明」)
  • Google Postmaster Tools に自分のドメインを登録すると、苦情率や評判が見える。

まとめ:評判

この作品で見たことをまとめます。

項目内容
なぜ要るか身元確認は「本人である」ことしか示さない
点が付く先送信元の番号(送信サービスが守る)と、ドメイン(自分が守る)
減点①存在しない宛先へ送る(バウンス)
減点②迷惑メールボタンを押される(苦情)。0.3% 未満、目標 0.1% 未満
減点③新しいドメインから急に大量に送る
中身怪しいリンク・画像だけ・テキスト版なしは減点されやすい
守り方届かない宛先に送らない。少しずつ増やす。取引と宣伝はサブドメインを分ける
見るGoogle Postmaster Tools

ここまでで、メールが届くために必要なものは出そろいました。身元確認の設定と、評判を守る送り方です。次の作品では、それらをまとめて引き受けてくれる Resend を使う理由を見ていきます。

  • メールのしくみ 8 / 11 ― 評判:本物でも届かない理由
  • 12 / 12
  • まとめ:評判
  • 点が付く先
  • 送信元の番号 と ドメイン
  • 減点
  • バウンス・苦情・急な大量送信・怪しい中身
  • 守り方
  • 届かない宛先に送らない・少しずつ増やす
  • 分ける
  • 取引メールと宣伝メールは別のサブドメイン
  • 見る
  • Google Postmaster Tools
  • 次の作品では、評判の良い送信網を借りる先としての Resend を見る。

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