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AWS でサービスを作る ― 知識ゼロから、構成を自分で考えられるまで / 全32章

AWS 02:リージョンと AZ ― どこに置き、どう分けるか

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AWS のサーバーは世界のどこにあるのか。データセンター・アベイラビリティゾーン(AZ)・リージョンの入れ子の関係、1つの AZ が止まってもサービスを続けるためのマルチ AZ、距離・決まりごと・料金・サービスの有無によるリージョンの選び方、そして IAM や CloudFront のようなグローバルなサービスまでを説明します。

右上の「東京」の中には、何があるのか

第1章で IAM Identity Center を有効にするとき、「リージョンは東京を選ぶ」と書きました。AWS のコンソール(操作画面)の右上には、いつも「東京」や「バージニア北部」といった地名が出ています。押してみると、図の左のように、世界中の地名がずらりと並びます。

これは、あなたがこれから作るものを、世界のどこにあるデータセンター群に置くかを選ぶ場所です。

ここで、いくつか疑問が浮かびます。

疑問この章での答え
「東京」は1つの建物なのか。その建物が停電したら全部止まるのか東京は独立した建物群を3つ以上まとめたもの。1か所止まっても続けられる
どの地名を選べばいいのか利用者との距離・決まりごと・料金・サービスの有無で選ぶ
作ったものが「消えた」のはなぜか地名ごとに世界が分かれていて、別の地名を見ていただけ

第1章の最後の落とし穴に「作ったものが消えた」がありました。その正体もこの章でわかります。

この章では、まだ何も作りません。ですが、どこに置き、どう分けて置くかは、この後のすべての章の前提になる大事な考え方です。

※2026年9月時点の情報です。画面・料金・細部は変わることがあります。

  • AWS でサービスを作る 02 ― リージョンと AZ
  • 1 / 18
  • 右上の「東京」の中には、何があるのか
  • コンソール右上の地名を押すと…
  • 会社
  • 1つの建物?
  • アジアパシフィック(東京)
  • ap-northeast-1
  • その建物が停電したら、全部止まる?
  • アジアパシフィック(大阪)
  • ap-northeast-3
  • インターネット
  • どれを選べばいい?
  • 安いところ?近いところ?
  • 米国東部(バージニア北部)
  • us-east-1
  • 欧州(フランクフルト)
  • eu-central-1
  • 検索
  • 作ったものが消えた?
  • 第1章の落とし穴の正体
  • この章の答え:東京は「独立した建物群(AZ)」を3つ以上まとめた「リージョン」
  • → 建物が1つ止まっても続けられる作りと、場所の選び方がわかる
  • ひらめき
  • コンソール右上の地名は「どこのデータセンター群で作るか」。まずはその中身から見ていく。

まず、サーバーは「データセンター」の中にある

クラウドと聞くと、雲の上にある実体のないものを想像するかもしれません。でも実際には、AWS のサーバーは地上の建物の中にあります。この建物をデータセンターと呼びます。

データセンターは、サーバーを何万台も置くために作られた専用の建物です。

設備役割
サーバー何万台も棚に並ぶ。あなたが借りるサーバーも、この中の1台(の一部)
電源電力会社からの電気に加え、発電機や蓄電池で停電に備える
冷房サーバーは大量の熱を出すので、冷やし続ける
回線太いインターネット回線で外とつながる

第0章の「オンプレミス」で、自分たちでこれを全部用意するのは大変だという話をしました。AWS はこれを世界中に持っていて、あなたはその一部を借ります。

ただし、どれだけ立派なデータセンターでも、建物が1つなら、その建物ごと止まることがあります。広い範囲の停電、火災や浸水、建物につながる回線の切断などです。確率は低くても、ゼロにはできません。

では、建物が1つ止まってもサービスを続けるには、どうすればよいでしょうか。答えは単純で、離れた別の建物にも置いておくことです。AWS はこの考え方を、次の「AZ」という単位で用意しています。

  • AWS でサービスを作る 02 ― リージョンと AZ
  • 2 / 18
  • まず、サーバーは「データセンター」の中にある
  • 会社
  • サーバー
  • 何万台も並ぶ
  • それでも1つの建物は
  • 電源
  • 発電機と蓄電池で停電に備える
  • NG
  • 大規模な停電
  • NG
  • 火災・浸水
  • 冷房
  • 機械の熱を冷やし続ける
  • NG
  • 回線の切断
  • データセンター
  • 回線
  • 太い回線で外とつながる
  • ひらめき
  • データセンター=サーバーを何万台も置くための建物。電源・冷房・回線・警備がそろっている。

建物をまとめた単位が「アベイラビリティゾーン(AZ)」

アベイラビリティゾーン(Availability Zone、略して AZ)は、1つ以上のデータセンターをまとめた単位です。図では、左の大きな建物が縮んで AZ a の中に入りました。

AZ の大事な性質は、次のとおりです。

性質意味
独立した設備AZ ごとに電源・冷房・回線が別々。1つの AZ の停電が、他の AZ に広がりにくい
離れた場所AZ どうしは何キロも離れている。1つの火災や浸水で、複数の AZ が同時にやられにくい
近すぎず遠すぎずそれでも互いに 100 km 以内にある
専用回線AZ どうしは、速くて遅れの少ない専用の回線で結ばれている

「離れているのに 100 km 以内」には理由があります。離すほど災害に強くなりますが、離しすぎると AZ 間の通信に時間がかかります。同時に被災しにくく、それでいて AZ をまたいでもほとんど遅くならない距離に置かれているのです。

そのおかげで、あなたは「サーバーを AZ a と AZ c に1台ずつ置く」という作り方ができます。2台は別の建物群にありながら、同じ場所にあるのとほとんど変わらない速さで連携できます。

なお「アベイラビリティ」は「使える状態であること(可用性)」という意味です。「使える状態を保つための区画」と覚えるとよいでしょう。

  • AWS でサービスを作る 02 ― リージョンと AZ
  • 3 / 18
  • 建物をまとめた単位が「アベイラビリティゾーン(AZ)」
  • AZ どうしは何 km も離し、それでも 100 km 以内。高速な専用回線でつなぐ
  • AZ a
  • AZ c
  • AZ d
  • 会社
  • 会社
  • 会社
  • 会社
  • 会社
  • 独立した電源・冷房・回線
  • 独立した電源・冷房・回線
  • 独立した電源・冷房・回線
  • 1つの AZ が停電や災害で止まっても、ほかの AZ は巻き込まれにくいように作られている
  • ひらめき
  • AZ=電源・冷房・回線が独立したデータセンターの集まり。AZ どうしは離れていて、専用回線で結ばれる。

AZ を3つ以上まとめた地域が「リージョン」

AZ をさらにまとめた、地理的な地域をリージョンと呼びます。図の灰色の大きな囲みが、東京リージョンです。

どのリージョンにも、AZ が3つ以上あります。東京リージョンには4つの AZ があります。

単位中身例
データセンターサーバーが置かれた建物(場所は公開されていない)
AZ1つ以上のデータセンターの集まりap-northeast-1a
リージョン3つ以上の AZ がある地域ap-northeast-1(東京)

つまり、データセンター ⊂ AZ ⊂ リージョンという入れ子の関係です。

あなたが AWS で何かを作るとき、選ぶのは「リージョン」と、場合によっては「AZ」です。個々のデータセンターを選ぶことはありません。どの建物のどの棚に置くかは、AWS が決めます。

コンソール右上の「東京」は、このリージョンを選ぶ場所だったのです。東京を選んだ状態でサーバーを作ると、東京リージョンの中のどれかの AZ にサーバーが作られます。どの AZ にするかは、作るときに自分で指定できます(第6章でサブネットを AZ ごとに作るときに出てきます)。

  • AWS でサービスを作る 02 ― リージョンと AZ
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  • AZ を3つ以上まとめた地域が「リージョン」
  • リージョン:アジアパシフィック(東京) ap-northeast-1
  • AZ a
  • AZ c
  • AZ d
  • 会社
  • 会社
  • 会社
  • 会社
  • 会社
  • 独立した電源・冷房・回線
  • 独立した電源・冷房・回線
  • 独立した電源・冷房・回線
  • データセンター ⊂ AZ ⊂ リージョン。サービスを作るときに選ぶのは「リージョン」と「AZ」
  • ひらめき
  • リージョン=地理的な地域(例:東京)。どのリージョンにも AZ が3つ以上ある。東京は4つ。

リージョンは世界に39か所ある

2026年時点で、AWS のリージョンは世界に39か所、AZ は合わせて124あります。図はその一部です。数は毎年のように増えています。

日本には2つのリージョンがあります。

リージョンコードAZ の数
アジアパシフィック(東京)ap-northeast-14
アジアパシフィック(大阪)ap-northeast-33

リージョンがたくさんあるのは、世界中の利用者の近くにサーバーを置けるようにするためと、国や地域ごとの決まりごと(データをその国に置くこと、など)に応えるためです。

また、少し特殊なリージョンもあります。たとえば米国政府向けの専用リージョンや、中国のリージョンは、ふつうのアカウントからは使えません。この本では扱いません。

もう1つ知っておくとよいのが、2019年3月20日より後にできたリージョンは、アカウントで「有効化」するまで使えないことです(オプトインリージョンと呼びます)。東京や大阪は最初から使えます。新しいリージョンを使いたくなったら、アカウントの設定から有効にします。

最新のリージョンの一覧は、公式の「AWS グローバルインフラストラクチャ」のページで確認できます。

  • AWS でサービスを作る 02 ― リージョンと AZ
  • 5 / 18
  • リージョンは世界に39か所ある
  • インターネット
  • 主なリージョン(すべてではない)
  • 場所
  • 場所
  • アイルランド
  • オレゴン
  • 場所
  • 場所
  • フランクフルト
  • ソウル
  • 場所
  • バージニア北部
  • 場所
  • 東京
  • 場所
  • ムンバイ
  • 大阪
  • 場所
  • 場所
  • シンガポール
  • 場所
  • サンパウロ
  • 場所
  • シドニー
  • 2026年時点で39リージョン・124 AZ。数は増え続けるので、最新は公式の「グローバルインフラストラクチャ」で確認
  • ひらめき
  • 日本には東京と大阪の2つ。国や地域ごとにリージョンがあり、利用者の近くを選べる。

名前の読み方:リージョンコードと AZ

画面では「アジアパシフィック(東京)」と表示されますが、CLI や設定ファイルでは リージョンコードという短い名前を使います。東京は ap-northeast-1 です。

部分意味
apAsia Pacific(アジアパシフィック)
northeast北東。日本や韓国などのあたり
1その地域で何番目か。大阪は ap-northeast-3

米国東部のバージニア北部は us-east-1、欧州のフランクフルトは eu-central-1 という具合です。

AZ の名前は、リージョンコードの後ろにアルファベットを1文字付けたものです。東京なら ap-northeast-1a、ap-northeast-1c、ap-northeast-1d などです。

ここに1つ注意があります。古いアカウントでは、AZ の名前と実際の場所の対応がアカウントごとに違うことがあります。あなたの 1a と、別のアカウントの 1a が別の建物群を指している、ということが起こりえます(利用者が特定の AZ に集中しないよう、昔はそのように割り当てていました)。2025年11月以降に作ったアカウントは、同じ名前が同じ場所を指します。

アカウントをまたいで「同じ場所」を指したいときは、AZ ID(apne1-az1 のような名前)を使います。AZ ID は、どのアカウントでも同じ場所を指します。図の右の対応は一例で、実際の対応は後で紹介する CLI の命令で確かめられます。

  • AWS でサービスを作る 02 ― リージョンと AZ
  • 6 / 18
  • 名前の読み方:リージョンコードと AZ
  • ap-northeast-1
  • # 例:AZ の名前と AZ の ID
  • ap-northeast-1a → apne1-az4
  • ap-northeast-1c → apne1-az1
  • ap
  • アジアパシフィック
  • ap-northeast-1d → apne1-az2
  • northeast
  • 北東(日本・韓国など)
  • AZ の名前(1a)と場所の対応は、
  • 1
  • その地域の何番目か
  • 古いアカウントでは人によって違うことがある。
  • 同じ場所を指したいときは AZ の ID を使う。
  • ひらめき
  • ap-northeast-1 が東京、末尾に a・c・d を付けたものが AZ の名前。画面でも CLI でもこの名前を使う。

1つの AZ だけに置くと、その AZ と運命を共にする

さて、リージョンと AZ の関係がわかったところで、この章でいちばん大事な考え方です。

図では、東京リージョンの AZ a と AZ d に、サーバーを1台ずつ置いています。

もしサーバーを AZ a に2台置いたら、どうなるでしょうか。台数は同じ2台でも、AZ a が止まったとき、2台とも一緒に止まります。同じ建物群にあるので、停電や回線の障害を一緒に受けるからです。

AWS は、「AZ の障害は起こりうる」という前提に立っています。だから、大事なサービスは最低2つの AZ に分けて置くことを勧めています。これをマルチ AZと呼びます。

置き方AZ が1つ止まったら
1台だけ止まる
同じ AZ に2台2台とも止まる
別々の AZ に1台ずつもう片方で続けられる

真ん中の AZ c は空いています。3つめの AZ は、台数を増やすときや、2つのうち1つが止まったときの置き場所として使えます。

この「壊れる前提で、分けて置く」という考え方は、この本で何度も出てきます。サーバー(第11・12章)、データベース(第13章)、そして災害対策(第29章)でも、形を変えて同じ発想を使います。

  • AWS でサービスを作る 02 ― リージョンと AZ
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  • 1つの AZ だけに置くと、その AZ と運命を共にする
  • リージョン:東京
  • AZ a
  • AZ c
  • AZ d
  • 会社
  • 会社
  • 会社
  • 会社
  • 会社
  • サーバー
  • サーバー A
  • (予備に使える)
  • サーバー
  • サーバー B
  • 動いている
  • 動いている
  • AWS は「AZ の障害は起こりうる」前提で、複数の AZ に分けて置くことを勧めている
  • 大事なサービスは最低2つの AZ に。これを「マルチ AZ」と呼ぶ
  • ひらめき
  • サーバーを2つの AZ に分けて置けば、片方の AZ が止まっても、もう片方で続けられる。

AZ a が止まった:それでもサービスは続く

AZ a で大規模な停電が起き、AZ a の中のサーバー A に届かなくなったとします。

このとき、AZ d のサーバー B は、別の電源・冷房・回線で動いているので影響を受けません。利用者からのリクエスト(「このページを見せて」という求め)は、サーバー B が受け続けます。利用者から見れば、何も起きていないのと同じです。

ただし、これを実現するには、まだ足りない部品があります。

足りないもの役割章
入口(ロードバランサー)動いているサーバーだけにリクエストを振り分ける第11章
自動で台数を戻す仕組み止まったぶんを、動いている AZ に作り直す第12章
DB の予備データベースも別の AZ に待機させ、切り替える第13章

サーバーを別々の AZ に置いただけでは、利用者は相変わらずサーバー A の住所にアクセスしてしまいます。「どちらに送るか」を決める入口が要るのです。これは第11章の困りごとにつながります。

また、実際の AZ 障害は、「完全に止まる」だけでなく「一部だけ遅い」「一部の機能だけ動かない」という形で起きることもあります。第17章の監視で、そうした症状に気づく方法を扱います。

  • AWS でサービスを作る 02 ― リージョンと AZ
  • 8 / 18
  • AZ a が止まった:それでもサービスは続く
  • リージョン:東京
  • AZ a(停電)
  • AZ c
  • AZ d
  • 会社
  • 会社
  • 会社
  • 会社
  • 会社
  • リクエスト
  • NG
  • サーバー
  • サーバー A
  • (予備に使える)
  • サーバー
  • サーバー B
  • 届かない
  • 受け続ける
  • どちらに送るかを振り分ける「入口」は第11章、台数を自動で戻す仕組みは第12章で作る
  • DB の予備を別の AZ に置く(マルチ AZ 配置)は第13章
  • ひらめき
  • 止まった AZ のサーバーには届かなくなるが、別の AZ のサーバー B が受け続ける。利用者は気づかない。

リージョンどうしは独立している

AZ が「近くの別の建物群」だったのに対し、リージョンどうしは完全に独立しています。

東京リージョンで作ったサーバーやデータは、東京リージョンの中だけにあります。コンソールの右上をバージニア北部に切り替えると、東京で作ったサーバーは一覧に出てきません。図の右がその状態です。

起きること理由
作ったものが一覧に無い画面右上のリージョンが、作ったときと違う
別のリージョンに同じものを作れるリージョンごとに別の世界なので、名前がぶつからないことが多い
別のリージョンへは自動では写らない写したいなら、自分でコピーの設定をする

第1章の落とし穴「作ったものが消えた」の多くは、これです。慌てる前に、右上のリージョンを確かめてください。

リージョンが独立しているのは、障害をそのリージョンの中に閉じ込めるためです。東京リージョンで大きな問題が起きても、他のリージョンは影響を受けないように作られています。

逆に言えば、東京リージョン全体が使えなくなるような大災害に備えたいなら、大阪など別のリージョンにデータを写しておく必要があります。どこまで備えるかは、第29章で詳しく考えます。

  • AWS でサービスを作る 02 ― リージョンと AZ
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  • リージョンどうしは独立している
  • 東京 ap-northeast-1
  • バージニア北部 us-east-1
  • サーバー
  • フォトログのサーバー
  • 検索
  • ここで作った
  • データベース
  • フォトログのデータ
  • 何も無い…?
  • ここにある
  • 画面右上がこちらになっていただけ
  • リージョンが独立しているのは、障害をそのリージョンの中に閉じ込めるため
  • 別のリージョンへ写すには、自分で「コピーする」操作が要る(第29章)
  • ひらめき
  • 東京で作ったサーバーは、バージニア北部の画面には出てこない。「消えた」の多くはこれ。

リージョンの選び方:4つの問い

では、どのリージョンを選べばよいのでしょうか。次の4つの問いで考えます。

問い考えること
① 利用者に近いか利用者から遠いほど、通信に時間がかかって応答が遅くなる
② 決まりごと法律・取引先との契約・社内の規程で「日本国内に置く」と決まっていないか
③ 料金同じ部品でも、リージョンによって単価が違う
④ サービスの有無使いたいサービスや機能が、そのリージョンで提供されているか

順番が大事です。① と ② を先に決め、③ と ④ で確かめるのがよいでしょう。

① と ② は、後から変えるのがとても大変です。リージョンを引っ越すには、サーバーもデータも全部写し直す必要があるからです。一方、③ の料金差は、多くの場合それほど大きくありません。

④ は見落としがちです。AWS の新しいサービスや機能は、米国のリージョンから始まり、順に広がることがよくあります。使いたい機能があるなら、作る前に公式の「リージョン別の AWS サービス」の一覧で確かめてください。

日本の利用者向けのサービスなら、ほとんどの場合、答えは東京になります。

  • AWS でサービスを作る 02 ― リージョンと AZ
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  • リージョンの選び方:4つの問い
  • 場所
  • 天秤
  • ① 利用者に近いか
  • ② 決まりごと
  • 遠いほど応答が遅くなる
  • 法律・契約・社内規程で国内保存
  • お金
  • パズル
  • ③ 料金
  • ④ 使いたいサービスがあるか
  • 同じ部品でもリージョンで単価が違う
  • 新しいサービスは一部から始まる
  • 迷ったら ① と ② を先に決め、③ と ④ で確かめる。安さだけで遠いリージョンを選ばない
  • ひらめき
  • 距離・決まりごと・料金・サービスの有無。日本の利用者向けなら、ほとんどの場合は東京になる。

距離は速さに効く:光でも往復に時間がかかる

「近いほうが速い」について、もう少し詳しく見ておきます。

インターネットの通信は、光ファイバーの中を光(に近い速さの信号)で進みます。光は速いですが、無限に速いわけではありません。しかも、ケーブルは地球をまっすぐ貫いているわけではなく、海底や陸を回り道しています。

通信の相手往復にかかる時間の目安
日本の利用者 → 東京リージョンとても短い
日本の利用者 → 米国東部のリージョン0.1秒以上かかることが多い

0.1秒なら気にならない、と思うかもしれません。でも、1つの画面を表示するのに、ブラウザは HTML・画像・データなどを取りに何十回も往復することがあります。1回0.1秒の遅れが何十回も重なると、利用者ははっきり「遅い」と感じます。

この遅れをレイテンシ(遅延)と呼びます。サーバーの性能をいくら上げても、距離によるレイテンシは縮みません。だから、利用者の近くにサーバーを置くことが大切なのです。

世界中に利用者がいる場合は、画像などを利用者の近くから配る CloudFront(第15章)を組み合わせます。

  • AWS でサービスを作る 02 ― リージョンと AZ
  • 11 / 18
  • 距離は速さに効く:光でも往復に時間がかかる
  • 会社
  • 東京
  • 1つの画面を出すのに、
  • ap-northeast-1
  • 画像・データ・部品の取得で
  • 何十回も往復することがある。
  • 0.1秒 × 何十回 = 体感で遅い
  • 近い
  • スマホ
  • 日本の利用者
  • 会社
  • バージニア北部
  • 海を越えて、往復 0.1 秒以上
  • us-east-1
  • ひらめき
  • 日本の利用者から米国のリージョンまでは、往復で0.1秒以上かかることが多い。1画面で何十回も往復する。

リージョンを選ばない「グローバル」なサービスもある

ほとんどの AWS のサービスはリージョンごとに分かれていますが、いくつかのサービスはグローバル、つまり全リージョン共通で1つです。

グローバルなサービス何をするか章
IAMユーザーと許可の管理第3章
Route 53ドメイン名と DNS第14章
CloudFront世界中の利用者の近くから配る第15章
Organizations複数のアカウントを束ねる第27章

たとえば IAM で作った許可は、東京でもバージニア北部でも同じように効きます。コンソールで IAM を開くと、右上のリージョンが「グローバル」と表示されます。

一方、図の右のように、サーバー(EC2)・ネットワーク(VPC)・データベース(RDS)などはリージョンごとです。ファイル置き場の S3 は少し特殊で、置き場の名前は世界で1つだけしか使えませんが、中身は選んだリージョンに保存されます。

そして、覚えておくべき例外があります。CloudFront で HTTPS を使うための証明書は、必ずバージニア北部(us-east-1)で作る決まりです。CloudFront がグローバルなサービスで、その設定の置き場がバージニア北部にあるためです。第14・15章で「東京で作ったのに選べない」とならないよう、頭の片隅に置いておいてください。

  • AWS でサービスを作る 02 ― リージョンと AZ
  • 12 / 18
  • リージョンを選ばない「グローバル」なサービスもある
  • インターネット
  • グローバル(1つで世界共通)
  • 場所
  • リージョンごと(ほとんど)
  • IAM
  • ユーザーと許可(第3章)
  • EC2
  • サーバー(第9章)
  • Route 53
  • ドメインと DNS(第14章)
  • VPC
  • ネットワーク(第5章)
  • CloudFront
  • 世界中から配る(第15章)
  • RDS
  • データベース(第13章)
  • Organizations
  • アカウントの束ね
  • S3
  • 名前は世界共通、中身はリージョン
  • 例外:CloudFront で使う証明書(第14・15章)は必ずバージニア北部(us-east-1)で作る
  • ひらめき
  • IAM・Route 53・CloudFront などは全リージョン共通。一部の設定はバージニア北部に置く決まりがある。

フォトログは東京リージョン、2つの AZ で始める

フォトログの利用者は日本にいます。4つの問いに答えてみます。

問いフォトログの答え
① 利用者に近いか利用者は日本。東京か大阪
② 決まりごと利用者の写真を扱うので、国内に置くと説明しやすい
③ 料金東京は米国より少し高めだが、差は許容できる
④ サービスの有無使いたい部品は東京でそろう

結論は東京リージョン(ap-northeast-1)です。大阪より AZ が多く、対応しているサービスも多いことも理由です。

そして最初から、2つの AZ(a と c)を使う前提で設計します。第9章ではサーバー1台から始めますが、ネットワーク(第5・6章)の段階で AZ を2つ用意しておけば、第11章でサーバーを2台に、第13章で DB の予備を置くときに、作り直さずに済みます。

大阪リージョンは、東京全体が使えなくなるような災害への備えの候補として、第29章で検討します。バージニア北部には、第14・15章で CloudFront 用の証明書だけを置く予定です。

それ以外のリージョンには、何も作りません。使わない場所に何かがあれば、それは消し忘れか、乗っ取りの跡です。

  • AWS でサービスを作る 02 ― リージョンと AZ
  • 13 / 18
  • フォトログは東京リージョン、2つの AZ で始める
  • 東京 ap-northeast-1
  • AZ a
  • AZ c
  • 会社
  • 大阪
  • 災害対策の候補(第29章)
  • サーバー
  • Web
  • サーバー
  • Web
  • 第9章〜
  • 第11章で2台に
  • 会社
  • バージニア北部
  • データベース
  • DB
  • データベース
  • DB の予備
  • 証明書など一部だけ
  • 第13章
  • 第13章
  • 使わないリージョンには何も作らない
  • ひらめき
  • 利用者は日本。国内に置けて近い東京を選び、サーバーと DB は最初から2つの AZ に分ける前提で設計する。

確かめ方:画面と CLI でリージョンを見る

どのリージョンを操作しているかは、入口ごとに決まり方が違います。

入口リージョンの決まり方
コンソール画面右上の地名。サービスごとに最後に使ったリージョンが残ることもある
CLI命令に付けた --region、無ければプロファイルの既定の設定
CloudShell開いたときのコンソールのリージョン

図の左の上の命令は、東京リージョンの AZ の名前と AZ ID の対応を一覧します。--query は、結果から見たい項目だけを取り出す指定です。自分のアカウントでの 1a がどの AZ ID なのかを、ここで確かめられます。

下の命令は、第1章で作った CLI のプロファイル photolog-admin の既定のリージョンを東京にします。これで、毎回 --region を付けなくても東京が操作されます。

コンソールでも、作業を始める前に右上のリージョンを見る癖を付けてください。特に、IAM などのグローバルなサービスの画面から別のサービスに移ったとき、リージョンが思わぬところになっていることがあります。

  • AWS でサービスを作る 02 ― リージョンと AZ
  • 14 / 18
  • 確かめ方:画面と CLI でリージョンを見る
  • # 東京の AZ を一覧する
  • $ aws ec2 describe-availability-zones \
  • 画面
  • コンソール
  • --region ap-northeast-1 \
  • 右上の地名で切り替え
  • --query 'AvailabilityZones[].[ZoneName,ZoneId]'
  • # CLI の既定のリージョンを東京にする
  • $ aws configure set region ap-northeast-1 \
  • ターミナル
  • CLI
  • --profile photolog-admin
  • --region か既定の設定
  • 新しいリージョンの一部は
  • 使う前に「有効化」が要る
  • ひらめき
  • コンソールは右上で、CLI は --region か既定の設定で、どのリージョンを操作するかが決まる。

お金:場所によって値段も、運ぶ料金も変わる

この章では何も作らないので、料金はかかりません。ただ、場所の選び方は、この後の料金に効いてきます。

料金の違い内容
リージョンごとの単価同じサーバーでも、リージョンによって1時間あたりの値段が違う。東京は米国東部より高めのことが多い
AZ をまたぐ通信同じリージョンの中でも、AZ をまたいでデータを送ると、量に応じて料金がかかる
リージョンをまたぐ通信東京から大阪へデータを写すときなども、量に応じて料金がかかる

AZ をまたぐ通信に料金がかかるなら、1つの AZ にまとめたほうが安いのでは、と思うかもしれません。たしかに少しは安くなります。でもそれは、AZ が止まったときにサービスごと止まることと引き換えです。AZ をまたぐ通信料は、「止まらない」ための保険料と考えるのがよいでしょう。

具体的な単価は、各サービスの料金ページで、リージョンを選んで確かめてください。料金の考え方そのものは、第4章で詳しく扱います。

  • AWS でサービスを作る 02 ― リージョンと AZ
  • 15 / 18
  • お金:場所によって値段も、運ぶ料金も変わる
  • お金
  • リージョンごとの単価
  • ひらめき
  • 考え方
  • 東京は米国東部より高めのことが多い
  • 少し高くても、利用者に近い東京を選ぶ。
  • AZ をまたぐ通信料は「止まらない」ための
  • 更新
  • AZ をまたぐ通信
  • 保険料と考える。
  • 同じリージョンでも少し課金される
  • 細かい単価は各サービスの料金ページで確認。
  • インターネット
  • リージョンをまたぐ通信
  • 写すときなどに課金される
  • ひらめき
  • 同じ部品でもリージョンで単価が違う。AZ をまたぐ通信とリージョンをまたぐ通信にも料金がかかる。

よくある落とし穴

リージョンと AZ にまつわる、よくある失敗です。

落とし穴何が起きるか防ぎ方
全部を1つの AZ に置くその AZ が止まるとサービス全体が止まる最初から2つの AZ を使う設計にする
リージョンの見間違い「消えた」「上限で増やせない」と慌てる作業前に右上を見る。CLI は既定のリージョンを決める
安さだけで遠くを選ぶ遅い。国内保存の約束を破ることも① 距離と ② 決まりごとを先に決める
よそのリージョンに消し忘れ見ていない場所で課金が続く使うリージョンを決め、他には作らない
AZ の名前で場所を伝える別のアカウントでは違う場所のことがあるアカウントをまたぐときは AZ ID を使う
使いたい機能が無い作った後で、そのリージョンでは使えないとわかる作る前に対応リージョンを確かめる

4つ目は、乗っ取りの発見にもつながります。鍵を盗まれた人が、あなたの普段使わないリージョンで大量のサーバーを動かす、という事件はよくあります。使っていないはずのリージョンに料金が出ていたら、真っ先に疑うべきサインです。

  • AWS でサービスを作る 02 ― リージョンと AZ
  • 16 / 18
  • よくある落とし穴
  • 会社
  • 全部を1つの AZ に置く
  • 検索
  • リージョンの見間違い
  • その AZ が止まると全部止まる
  • 「消えた」「増やせない」と慌てる
  • インターネット
  • 安さだけで遠くを選ぶ
  • お金
  • よそのリージョンに消し忘れ
  • 遅い・国内保存の約束を破る
  • 見ていない場所で課金が続く
  • 場所
  • AZ の名前で場所を伝える
  • パズル
  • 使いたい機能が無い
  • 別アカウントでは違う場所のことも
  • 作る前に対応リージョンを確認
  • ひらめき
  • 1つの AZ に全部を置く・リージョンを見間違える・安さだけで遠くを選ぶ。どれも最初に決めれば防げる。

片付け:すべてのリージョンに消し忘れが無いか見る

この章で作ったものはありません。代わりに、「どのリージョンに何があるか」を見渡す方法を覚えておきましょう。リージョンが独立しているということは、見ていないリージョンのものは目に入らないということでもあるからです。

道具できること
請求の画面(Billing and Cost Management)料金をリージョン別・サービス別に見られる。知らないリージョンに料金が出ていないか確かめる
AWS Global ViewEC2 のサーバーや VPC などを、全リージョンまとめて一覧できる
リソースの検索(Resource Explorer など)タグや種類で、リージョンをまたいで探せる。タグは第4章で扱う

おすすめの習慣は、月に一度、請求の画面でリージョン別の料金を見ることです。フォトログなら、東京と、証明書だけのバージニア北部以外に料金が出ていたら、何かがおかしいと判断できます。

第1章で作った予算の知らせ(AWS Budgets)は、全リージョンの料金を合計して見張っています。どこかのリージョンで消し忘れがあれば、知らせが届きます。その知らせを受けて「どこで増えたか」を調べるときに、これらの道具が役立ちます。

  • AWS でサービスを作る 02 ― リージョンと AZ
  • 17 / 18
  • 片付け:すべてのリージョンに消し忘れが無いか見る
  • 棒グラフ
  • インターネット
  • 検索
  • 請求の画面
  • Global View
  • リソースの検索
  • 料金をリージョン別に見られる
  • 全リージョンのサーバー等を一覧
  • タグで全体を探す(第4章)
  • 月に一度は、請求の画面で「知らないリージョンに料金が出ていないか」を確かめる習慣を
  • ひらめき
  • この章で作るものは無い。代わりに、リージョンをまたいで「何があるか」を見る方法を覚えておく。

まとめ:場所を選び、壊れる前提で分けて置く

この章で見たことをまとめます。

用語意味
データセンターサーバーを置く建物。1つだけでは停電や災害に弱い
AZ(アベイラビリティゾーン)独立した電源・冷房・回線を持つデータセンターの集まり。互いに離れ、100 km 以内
リージョン3つ以上の AZ がある地域。東京は ap-northeast-1、大阪は ap-northeast-3
マルチ AZ2つ以上の AZ に分けて置き、1つ止まっても続ける
リージョンの独立作ったものはそのリージョンの中だけ。別のリージョンの画面には出ない
リージョンの選び方① 距離 ② 決まりごと ③ 料金 ④ サービスの有無
グローバルなサービスIAM・Route 53・CloudFront など。全リージョン共通

この章の考え方の芯は、「利用者の近くに置く」「壊れる前提で、分けて置く」の2つです。

さて、グローバルなサービスの代表として IAM が出てきました。第1章では、Identity Center で「管理者」の許可セットを自分に割り当てました。でも、管理者は何でもできてしまいます。フォトログのサーバーが写真の置き場を使うとき、チームの仲間が請求だけを見たいとき、それぞれに必要な分だけの許可を渡すには、どうすればよいのでしょうか。

次の第3章では、IAM:誰に何を許すかを見ていきます。

  • AWS でサービスを作る 02 ― リージョンと AZ
  • 18 / 18
  • まとめ:場所を選び、壊れる前提で分けて置く
  • データセンター
  • サーバーを置く建物。1つだけでは停電や災害に弱い
  • AZ
  • 独立した電源・冷房・回線を持つデータセンターの集まり
  • リージョン
  • 3つ以上の AZ がある地域。東京は ap-northeast-1
  • マルチ AZ
  • 2つ以上の AZ に分けて置き、1つ止まっても続ける
  • リージョンの選び方
  • 距離・決まりごと・料金・サービスの有無
  • グローバルなサービス
  • IAM・Route 53・CloudFront など。全リージョン共通
  • ひらめき
  • 次の第3章:誰に何を許すか。第1章で作った日常用のユーザーの「権限」の中身、IAM を見ていく。

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