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AWS でサービスを作る ― 知識ゼロから、構成を自分で考えられるまで / 全32章

AWS 31:おわりに:構成を考える思考の型

発行
アニメモ公式
版
第2版
改訂
コマ
全16

本全体をふり返り、構成を考える思考の型をまとめます。「困りごと → 部品 → 仕組み → 注意とお金 → 次の困りごと」の輪、つなぐ・計算する・しまう・守る・見張る・待たせないの6つの役割ごとの「困りごと → 部品」対応表、計算とデータの分かれ道、作る前・選ぶとき・図ができたら・動かし始めたらの判断の問いのチェックリスト、よくある考え違い、そして次に学ぶ公式の資料・資格・学び方を案内します。

ここまでの旅:1台のサーバーから、要件に合わせた構成へ

この本も、最後の章になりました。まず、ここまでの道のりをふり返ります。

まとまり章できるようになったこと
1 1台のサーバー第1〜10章安全なアカウント、権限、お金の見張り、自分専用のネットワーク、サーバーとディスク
2 3層の Web 構成第11〜16章入口(ALB)、自動で増減、専用の DB、ドメインと HTTPS、ファイル置き場。一般的な Web サービスを自分で組める
3 要件に合わせた構成第17〜30章監視、自動化、秘密の管理、コンテナ、サーバーレス、非同期、キャッシュ、ログイン、守り、設計の原則、災害対策、そして要件からの設計

振り返ると、どの章も同じ形で書かれていました。

順番章の中で見たこと
1前の章から続く困りごと(その部品が無いと何が起きるか)
2それを解決する部品
3部品の仕組み
4実際の作り方
5注意とお金
6次の章につながる、新しい困りごと

この鎖が、この本でいちばん伝えたかったことです。AWS の画面はよく変わり、サービスの名前も変わり、新しい部品は毎年増えます。でも、「困りごとから考え、それを解く部品を選び、選んだことで生まれる次の困りごとに備える」という考え方は変わりません。

この章では、その考え方を思考の型としてまとめ直し、本全体の「困りごと → 部品」の対応表と、判断の問いのチェックリストを作ります。最後に、次に何を学べばよいかを案内します。

※2026年9月時点の情報です。画面・料金・細部は変わることがあります。

  • AWS でサービスを作る 31 ― おわりに:構成を考える思考の型
  • 1 / 16
  • ここまでの旅:1台のサーバーから、要件に合わせた構成へ
  • サーバー
  • ネットワーク
  • パズル
  • 1台のサーバー
  • 3層の Web 構成
  • 要件に合わせた構成
  • 第1〜10章:基礎と1台
  • 第11〜16章:実務の土台
  • 第17〜30章:運用と設計
  • どの章も「困りごと → 解決する部品 → 仕組み → 作り方 → 注意とお金 → 次の困りごと」の順だった
  • この「鎖」こそが、画面や名前が変わっても使える、構成を考える思考の型
  • ひらめき
  • 32章で、部品を1つずつ「困りごとの答え」として積み上げてきた。最後に、その考え方をまとめる。

思考の型:困りごとから始めて、困りごとで終わる

構成を考える思考の型は、図のような輪です。

番号段階問い
1困りごといま、誰が、何に困っている? それは数字でいうとどれくらい?
2部品を選ぶそれを解く部品の候補は? どれを選び、どれを捨てる?
3仕組みを知るその部品は、どういう仕組みで困りごとを解く? 何を前提にしている?
4注意とお金何に課金される? どんな事故が起きやすい?
5次の困りごとその部品を入れたことで、新しく何が困るようになった?

5番目が大事です。部品を入れると、必ず新しい困りごとが生まれます。この本の中で、何度もそれを見てきました。

入れた部品生まれた困りごとそれを解いた部品
サーバーを2台に(第11章)どちらに送る?ALB
台数を自動で増減(第12章)ログイン状態や画像がサーバーに残ると消える状態を外へ(RDS・S3・ElastiCache)
DB を分けた(第13章)接続の数・パスワードの置き場接続の管理・Secrets Manager(第20章)
重い処理を後回しに(第24章)失敗したものが見えにくいデッドレターキュー・監視
複数リージョンに複製(第29章)間違いもすぐ写る時点を選べるバックアップ

この輪を回すたびに、構成は少しずつ育ちます。逆に言えば、困りごとが無いのに部品を足してはいけません。足した部品は、必ず新しい困りごと(料金・手間・壊れる所)を連れてくるからです。

  • AWS でサービスを作る 31 ― おわりに:構成を考える思考の型
  • 2 / 16
  • 思考の型:困りごとから始めて、困りごとで終わる
  • 注意
  • 困りごと
  • 検索
  • 次の困りごと
  • 例:サーバー2台 → 入口が要る(ALB) → どちらに入ったか忘れる → 状態を外へ
  • パズル
  • 部品を選ぶ
  • お金
  • 注意とお金
  • 設定
  • 仕組みを知る
  • ひらめき
  • 部品を入れると、必ず新しい困りごとが生まれる。それを次の部品で解く。構成はこの輪で育つ。

対応表1 つなぐ:届ける・区切る・名前を付ける

ここから6つの表で、本全体の「困りごと → 部品」の対応をまとめます。上の帯は、第0章で見た役割の色です。表の括弧の数字は章の番号です。

1つ目はつなぐ部品です。

困りごと部品章
自分専用のネットワークがほしい。他と住所が重ならないようにしたいVPC、CIDR の設計5
外に見せる所と、隠す所を分けたいパブリック/プライベートのサブネット、ルートテーブル、インターネットゲートウェイ6
隠したサーバーから、更新や外の API のために外へ出たいNAT ゲートウェイ、VPC エンドポイント7
踏み台サーバーを置かずに、中のサーバーを操作したいSystems Manager(SSM)7・9
複数台に振り分けたい。壊れた台には送りたくないALB、ヘルスチェック11
名前でたどり着き、鍵付きの通信で通したいRoute 53、ACM14
遠くの利用者にも速く配りたいCloudFront15

ネットワークの部品は、どれも「何を通し、何を通さないか」を決めるためのものです。迷ったら、「この通信は、誰から誰へ、どの道を通るか」を線で描いてみてください。描けない線は、たいてい設定が足りない線です。

  • AWS でサービスを作る 31 ― おわりに:構成を考える思考の型
  • 3 / 16
  • 対応表1 つなぐ:届ける・区切る・名前を付ける
  • ネットワーク
  • つなぐ
  • CPU
  • 計算する
  • データベース
  • しまう
  • 盾
  • 守る
  • 折れ線
  • 見張る・直す
  • 電気
  • 速く・待たせない
  • 困りごと
  • 部品(章)
  • 自分専用のネットワークがほしい
  • VPC・CIDR の設計(5)
  • 外に見せる所と、隠す所を分けたい
  • パブリック/プライベートのサブネット(6)
  • 隠したサーバーから外へ出たい
  • NAT ゲートウェイ・VPC エンドポイント(7)
  • 複数台に振り分けたい
  • ALB(11)
  • 名前でたどり着き、鍵付きで通したい
  • Route 53・ACM(14)
  • 遠くの利用者にも速く配りたい
  • CloudFront(15)
  • ひらめき
  • 外から届けたい、でも中は見せたくない。ネットワークの部品は「通す」と「通さない」を決める。

対応表2 計算する:処理を動かす場所を選ぶ

2つ目は計算する部品です。

困りごと部品章
OS から自由に設定したい。長く動かしたいEC29
1台では足りない。混み具合が変わる。壊れたら入れ替えたいAuto Scaling12
動く環境ごと運びたい。サーバーの世話を減らしたいECR、ECS、Fargate21
ときどき来る短い処理。来ないときは払いたくないLambda22
外に API として公開したいAPI Gateway、ALB22・11
長くて重い処理を、手順どおりに、失敗したらやり直しながら進めたいStep Functions、専用のマネージドサービス24・30

選ぶときの軸は、第30章で見た3つです。

軸聞くこと
処理の長さ1回で何分かかる?(Lambda は最長15分)
来る頻度ずっと来る? ときどき来る? 波がある?
世話の範囲OS まで自分で面倒を見たい? 見たくない?

迷ったら、世話の少ないほう(Lambda や Fargate)から検討し、合わない理由が見つかったら世話の多いほうへ、という順が安全です。世話が少ないほど、あなたが守る範囲(第0章の責任共有モデル)も小さくなるからです。

  • AWS でサービスを作る 31 ― おわりに:構成を考える思考の型
  • 4 / 16
  • 対応表2 計算する:処理を動かす場所を選ぶ
  • ネットワーク
  • つなぐ
  • CPU
  • 計算する
  • データベース
  • しまう
  • 盾
  • 守る
  • 折れ線
  • 見張る・直す
  • 電気
  • 速く・待たせない
  • 困りごと
  • 部品(章)
  • OS から自由に触りたい
  • EC2(9)
  • 1台では足りない・混み具合が変わる
  • Auto Scaling(12)
  • 動く環境ごと運びたい・台数の世話を減らしたい
  • ECS・Fargate・ECR(21)
  • ときどき来る短い処理
  • Lambda(22)
  • 外に API として公開したい
  • API Gateway(22)・ALB(11)
  • 長くて重い処理を、手順どおり進めたい
  • Step Functions(24)・専用サービス(30)
  • ひらめき
  • 処理の長さ・来る頻度・世話をどこまでするかで選ぶ。迷ったら、世話の少ないほうから検討する。

対応表3 しまう:データの形と読み方で選ぶ

3つ目はしまう部品です。

困りごと部品章
サーバーのディスクが要る。まるごと控えを取りたいEBS、スナップショット10
表を自由に検索・集計したい。重なりを防ぎたいRDS、Aurora13
写真や動画などのファイルを、安く大量に置きたいS3、ストレージクラス、ライフサイクル15
キーで引くだけ。とても大量で、いつも速くDynamoDB23
同じものを何度も読むのを減らしたいElastiCache、CloudFront25・15
壊れても、誤って消しても戻したい各サービスのバックアップ、AWS Backup10・13・29

データの部品は、データの形と読み書きのしかたで選びます。

聞くこと答えが向かう先
ファイル(写真・動画・書類)か?S3
表どうしを結んで検索・集計する? 重なってはいけない書き込みがある?RDS・Aurora
「このキーの項目をください」だけで済む? 量がとても多い?DynamoDB
同じものを何度も読む? 少し古くてもよい?キャッシュ

データは、計算の部品と違って後から引っ越すのが大変です。第23章で見たように、DynamoDB は「アクセスのしかたから設計する」ので、読み方が決まっていないうちに選ぶと苦労します。迷ったら、要件の「どう読むか」をもう一度書き出してみてください。

  • AWS でサービスを作る 31 ― おわりに:構成を考える思考の型
  • 5 / 16
  • 対応表3 しまう:データの形と読み方で選ぶ
  • ネットワーク
  • つなぐ
  • CPU
  • 計算する
  • データベース
  • しまう
  • 盾
  • 守る
  • 折れ線
  • 見張る・直す
  • 電気
  • 速く・待たせない
  • 困りごと
  • 部品(章)
  • サーバーのディスクが要る
  • EBS・スナップショット(10)
  • 表を自由に検索・集計、重なりを防ぎたい
  • RDS・Aurora(13)
  • 写真や動画などのファイル
  • S3・ライフサイクル(15)
  • キーで引くだけ・とても大量・速く
  • DynamoDB(23)
  • 同じものを何度も読む
  • ElastiCache・CloudFront(25・15)
  • 壊れても・消しても戻したい
  • バックアップ・AWS Backup(10・13・29)
  • ひらめき
  • ファイルか、表か、キーで引くか、何度も読むか。データの形と、読み書きのしかたが部品を決める。

対応表4 守る:誰が・何を・どこから

4つ目は守る部品です。

困りごと部品章
アカウントを乗っ取られたくないルートユーザーの MFA、IAM Identity Center1
人とプログラムに、必要な分だけ許したいIAM のロールとポリシー、最小権限3
通してよい通信だけを通したいセキュリティグループ、NACL8
パスワードや鍵をコードに書きたくない。保存するデータを暗号化したいSecrets Manager、Parameter Store、KMS20
CI/CD に長く使える鍵を置きたくないOIDC で一時的な権限を借りる19
利用者のログインを作りたいCognito26
攻撃を入口で止めたいWAF、Shield27
誰が何をしたかを残し、怪しい動きに気づきたいCloudTrail、GuardDuty、Config、Security Hub27
多くのアカウントに、まとめて決まりをかけたいOrganizations、SCP27

守りの部品を選ぶときの考え方は3つです。

考え方意味
最小権限必要なものだけを、必要な間だけ許す
多層防御1枚の扉に頼らず、入口・ネットワーク・サーバー・データの各段で守る
記録防げなかったときに、何が起きたかを後から追えるようにする

どれも、ほとんどお金がかからないものから始められます。規模が小さくても、守りの柱だけは下げない。第28章で見たとおりです。

  • AWS でサービスを作る 31 ― おわりに:構成を考える思考の型
  • 6 / 16
  • 対応表4 守る:誰が・何を・どこから
  • ネットワーク
  • つなぐ
  • CPU
  • 計算する
  • データベース
  • しまう
  • 盾
  • 守る
  • 折れ線
  • 見張る・直す
  • 電気
  • 速く・待たせない
  • 困りごと
  • 部品(章)
  • アカウントを乗っ取られたくない
  • MFA・IAM Identity Center(1)
  • 人とプログラムに、必要な分だけ許したい
  • IAM のロールとポリシー(3)
  • 通してよい通信だけ通したい
  • セキュリティグループ・NACL(8)
  • パスワードや鍵をコードに書きたくない
  • Secrets Manager・KMS(20)
  • 利用者のログインを作りたい
  • Cognito(26)
  • 攻撃を止め、怪しい動きに気づきたい
  • WAF・CloudTrail・GuardDuty(27)
  • ひらめき
  • 守りは1枚の扉ではなく、何重にも重ねる。そして「誰が何をしたか」を必ず残す。

対応表5 見張る・直す:気づき、同じものを何度でも作る

5つ目は見張る・直す部品です。

困りごと部品章
お金の使いすぎに気づきたい。何に使ったか分けたいBudgets、Cost Explorer、タグ1・4
壊れたことに、利用者より先に気づきたいCloudWatch のメトリクス・アラーム、SNS で通知17
何が起きたか、後から調べたい。どこで遅いか知りたいCloudWatch Logs、X-Ray17
同じ構成を何度でも作りたい。変更の差分を確かめたいCloudFormation、CDK、Terraform18
手でデプロイするのが怖い。すぐ戻したいGitHub Actions、CodePipeline、ブルー/グリーン19
構成のリスクを、抜けなく確かめたいWell-Architected Tool28
復旧の手順が本当に動くか確かめたいFault Injection Service、Resilience Hub29

見張る部品は、利用者から見た症状を見張るのが基本です(第17章)。CPU の使用率より、「エラーの割合」「応答の遅さ」のほうが、利用者の困りごとに直結します。

そして、直す部品の中心はコードです。構成をコードにし、変更を自動で届け、壊れたら前の版に戻す。手作業を減らすほど、夜中の障害で慌てることが減ります。

  • AWS でサービスを作る 31 ― おわりに:構成を考える思考の型
  • 7 / 16
  • 対応表5 見張る・直す:気づき、同じものを何度でも作る
  • ネットワーク
  • つなぐ
  • CPU
  • 計算する
  • データベース
  • しまう
  • 盾
  • 守る
  • 折れ線
  • 見張る・直す
  • 電気
  • 速く・待たせない
  • 困りごと
  • 部品(章)
  • 壊れたことに先に気づきたい
  • CloudWatch のメトリクス・アラーム(17)
  • 何が起きたか、後から調べたい
  • CloudWatch Logs・X-Ray(17)
  • 同じ構成を何度でも作りたい
  • CloudFormation・CDK・Terraform(18)
  • 手でデプロイするのが怖い
  • GitHub Actions・OIDC・CodePipeline(19)
  • お金の使いすぎに気づきたい
  • Budgets・Cost Explorer・タグ(4)
  • 構成のリスクを抜けなく確かめたい
  • Well-Architected Tool(28)
  • ひらめき
  • 壊れたことに利用者より先に気づく。手作業をやめ、変更を小さく安全に届ける。

対応表6 速く・待たせない:つなぎ方を変える

最後の表は、部品そのものというより、部品のつなぎ方です。

困りごとつなぎ方・部品章
重い処理で利用者を待たせたくない受け付けと処理を分け、SQS のキューでつなぐ24
1つの出来事を、いくつもの所に知らせたいSNS、EventBridge24
失敗したら、やり直したい。やり直しても二重にならないように再試行、デッドレターキュー、冪等性24
決まった時刻に動かしたいEventBridge Scheduler30
大きなファイルでサーバーを塞ぎたくない署名付き URL で S3 へ直接15・30
同じものを何度も計算・読み出ししたくないキャッシュ(CloudFront・ElastiCache)25
1か所が止まっても続けたいMulti-AZ、単一障害点を無くす、4つの災害対策29

ここに並んだものは、どれも部品と部品の間の工夫です。同じ部品を使っていても、直列につなぐか、キューを挟むか、並列に並べるかで、速さも止まりにくさも大きく変わります(第29章の直列と並列)。

構成図を描いたら、部品だけでなく線にも目を向けてください。「この線は、相手が止まっていたらどうなる?」「この線を流れるものが10倍になったら?」と聞くと、つなぎ方の改善点が見えてきます。

  • AWS でサービスを作る 31 ― おわりに:構成を考える思考の型
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  • 対応表6 速く・待たせない:つなぎ方を変える
  • ネットワーク
  • つなぐ
  • CPU
  • 計算する
  • データベース
  • しまう
  • 盾
  • 守る
  • 折れ線
  • 見張る・直す
  • 電気
  • 速く・待たせない
  • 困りごと
  • 部品(章)
  • 重い処理で利用者を待たせたくない
  • SQS のキュー(24)
  • 1つの出来事を、いくつもの所に知らせたい
  • SNS・EventBridge(24)
  • 失敗したら、やり直したい
  • 再試行・デッドレターキュー(24)
  • 決まった時刻に動かしたい
  • EventBridge Scheduler(30)
  • 大きなファイルでサーバーを塞ぎたくない
  • 署名付き URL で S3 へ直接(15・30)
  • 1か所が止まっても続けたい
  • Multi-AZ・4つの災害対策(29)
  • ひらめき
  • 部品を足すだけでなく、「待たせない・止めない」つなぎ方にする。受け付けと処理を分ける。

迷ったときの分かれ道:計算とデータ

設計でいちばん迷うのは、処理を動かす場所とデータの置き場の2つです。どちらも、要件の数字に「はい / いいえ」で答えていくと、たいてい候補が絞れます。

処理を動かす場所答えが「はい」なら
1回の処理が15分を超える?ECS(Fargate)か EC2
ほとんど呼ばれない? イベントのたびに短く動く?Lambda
OS の設定や特別なソフトが要る?EC2
それ以外Fargate か Lambda。チームの慣れと、DB への接続のしかたで決める
データの置き場答えが「はい」なら
ファイル(写真・動画・書類)?S3
検索・集計が多い? 重なりを防ぐ書き込みがある?RDS・Aurora
キーで引くだけ? とても大量?DynamoDB
同じものを何度も読む?キャッシュ(ElastiCache・CloudFront)

ただし、この分かれ道は入口にすぎません。最後は第30章の手順4のように、候補を2〜3並べ、要件の数字で比べ、捨てた理由を書きます。

また、1つのサービスの中で、置き場を使い分けるのは普通のことです。第30章の予約サービスでは、画面のファイルは S3、予約は Aurora、よく読む一覧はキャッシュ、というように組み合わせました。「どれか1つを選ぶ」ではなく、「データの種類ごとに選ぶ」と考えてください。

  • AWS でサービスを作る 31 ― おわりに:構成を考える思考の型
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  • 迷ったときの分かれ道:計算とデータ
  • 処理を動かす場所
  • データの置き場
  • 1回15分を超える?
  • → ECS / EC2
  • ファイル?
  • → S3
  • ほとんど呼ばれない?
  • → Lambda
  • 検索・集計・重なり防止?
  • → RDS / Aurora
  • OS の設定が要る?
  • → EC2
  • キーで引くだけ・大量?
  • → DynamoDB
  • それ以外
  • → Fargate か Lambda
  • 同じものを何度も読む?
  • → キャッシュ
  • これは入口。最後は第30章の手順4のように、候補を2〜3並べて比べる
  • ひらめき
  • いちばん迷う2つの選択は、要件の数字に「はい / いいえ」で答えていくと、たいてい決まる。

判断の問いのチェックリスト ①:作る前と、選ぶとき

第28章の6つの判断の問いを、場面ごとのチェックリストにしました。まずは前半の2つの場面です。

作る前(要件と数字)ねらい
誰の、どんな困りごとを解く?目的がぶれると、部品が増え続ける
要らない機能は何?要らないものが決まると、構成が小さくなる(第30章の演習1)
1秒に何回? ピークは平均の何倍?部品の大きさと、自動で増やすかが決まる
データは1年でどれだけ増える?置き場の種類と料金が決まる
止まってよい時間・失ってよいデータは?冗長化とバックアップの程度が決まる(第29章)
選ぶとき(部品)ねらい
候補を2〜3出した?1つしか考えていないと、比べられない
捨てた候補の理由を、数字で言える?言えないなら、捨てたほうが良いのかもしれない
今ある部品で済まない?部品が増えるほど、壊れる所と料金が増える
マネージドに任せられない?差別化にならない重労働は借りる(第28章)
利用者が10倍になったら、何が変わる?育つ前提で作る

左の5つに答えられないうちは、まだ部品の名前を口にしない。これを守るだけで、設計の質は大きく変わります。

  • AWS でサービスを作る 31 ― おわりに:構成を考える思考の型
  • 10 / 16
  • 判断の問いのチェックリスト ①:作る前と、選ぶとき
  • 作る前(要件と数字)
  • 選ぶとき(部品)
  • チェック
  • 誰の、どんな困りごとを解く?
  • チェック
  • 候補を2〜3出した?
  • チェック
  • 要らない機能は何?
  • チェック
  • 捨てた候補の理由を、数字で言える?
  • チェック
  • 1秒に何回?ピークは平均の何倍?
  • チェック
  • 今ある部品で済まない?
  • チェック
  • データは1年でどれだけ増える?
  • チェック
  • マネージドに任せられない?
  • チェック
  • 止まってよい時間・失ってよいデータは?
  • チェック
  • 利用者が10倍になったら、何が変わる?
  • ひらめき
  • 部品の名前を口にする前に、左の5つに答える。選ぶときは右の5つ。答えられなければ、まだ早い。

判断の問いのチェックリスト ②:図ができたら、動かし始めたら

後半の2つの場面です。

図ができたら(見直し)ねらい
これが止まったら全部止まる、はどこ?単一障害点を探す(第29章)
AZ が1つ止まっても続く?サーバー・DB・NAT を AZ ごとに
2人が同時に来たら? 途中で落ちたら?うまくいかない流れを考える(第30章の二重予約・失敗の行き先)
鍵をコードに置いていない? 最小権限?守りの柱(第3・20章)
6本の柱で、受け入れたリスクを書いた?「わかっていて選んだ弱点」にする(第28章)
動かし始めたら(運用)ねらい
利用者より先に、異常に気づける?症状を見張るアラーム(第17章)
同じ構成を、コードから作り直せる?IaC(第18章)
変更を小さく出し、すぐ戻せる?CI/CD(第19章)
バックアップから、実際に戻した?復旧の練習(第29章)
月の料金と、その上位の項目を言える?コストの柱(第4章)

この20の問いは、どんな規模のサービスにも使えます。小さなサービスなら、多くの問いに「いまはやらない。理由はこう」と答えることになるでしょう。それで構いません。大事なのは、問いを飛ばさず、答えを持っていることです。

  • AWS でサービスを作る 31 ― おわりに:構成を考える思考の型
  • 11 / 16
  • 判断の問いのチェックリスト ②:図ができたら、動かし始めたら
  • 図ができたら(見直し)
  • 動かし始めたら(運用)
  • チェック
  • これが止まったら全部止まる、はどこ?
  • チェック
  • 利用者より先に、異常に気づける?
  • チェック
  • AZ が1つ止まっても続く?
  • チェック
  • 同じ構成を、コードから作り直せる?
  • チェック
  • 2人が同時に来たら?途中で落ちたら?
  • チェック
  • 変更を小さく出し、すぐ戻せる?
  • チェック
  • 鍵をコードに置いていない?最小権限?
  • チェック
  • バックアップから、実際に戻した?
  • チェック
  • 6本の柱で、受け入れたリスクを書いた?
  • チェック
  • 月の料金と、その上位の項目を言える?
  • ひらめき
  • 図を指さして「これが止まったら?」と聞く。動き始めたら、気づく仕組みと戻す練習を持つ。

よくある考え違い

最後に、AWS を学び始めた人がよく持つ考え違いを、この本の章と一緒に並べます。

考え違い本当は章
クラウドなら勝手に止まらない機械の故障は AWS が直すが、Multi-AZ などで止まらなくするのは自分の設計0・29
サーバーレスなら必ず安い呼ばれない時間は安いが、ずっと続く処理では割高になることもある22・30
マネージドなら全部おまかせ権限・暗号化・バックアップ・公開範囲の設定は、利用者の責任0・27
大きいインスタンスにすれば速い遅い原因が DB やネットワークなら変わらない。先に測る17・28
冗長化すれば誤削除も防げる複製は間違いもすぐ写す。時点を選べるバックアップが要る29
部品が多いほど強い直列の部品が増えるほど止まりやすく、料金も手間も増える29
一度作れば終わり利用者も要件も変わる。見直しを続ける28

どれも、この本で「なぜそうするのか」を積み上げてきた人なら、理由を説明できるはずです。もし説明できないものがあれば、括弧の章に戻って読み直してみてください。

考え違いの多くは、責任共有モデル(第0章)と、直列と並列(第29章)の2つを思い出すと解けます。AWS が守ってくれるのはどこまでか。部品を足すと、全体は強くなるのか弱くなるのか。この2つは、設計で迷ったときの羅針盤になります。

  • AWS でサービスを作る 31 ― おわりに:構成を考える思考の型
  • 12 / 16
  • よくある考え違い
  • クラウドなら勝手に止まらない
  • Multi-AZ などは自分で選ぶ。責任共有(0・29)
  • サーバーレスなら必ず安い
  • ずっと続く処理では割高にもなる(22・30)
  • マネージドなら全部おまかせ
  • 権限・暗号化・バックアップの設定は自分(0・27)
  • 大きいインスタンスにすれば速い
  • 遅い場所を測ってから(17・28)
  • 冗長化すれば誤削除も防げる
  • 複製は間違いも写す。時点のバックアップ(29)
  • 部品が多いほど強い
  • 直列の部品が増えるほど止まりやすい(29)
  • ひらめき
  • クラウドは魔法ではない。部品の性質と責任の分け方を知っていれば、考え違いは避けられる。

次に学ぶこと:公式の資料が、いちばん確かな教科書

この本は、AWS で構成を考えるための考え方の入口です。細部と最新の情報は、公式の資料で確かめる習慣を付けてください。

資料何がわかるか使いどころ
公式ドキュメント各サービスのユーザーガイド、制限、設定の意味。サービスごとの「よくある質問(FAQ)」部品を選ぶとき、設定するとき
AWS Well-Architected6本の柱の本文、分野ごとのレンズ、Tool設計を見直すとき(第28章)
AWS Architecture Center目的別の構成例(リファレンスアーキテクチャ)や解説似た要件の構成を探すとき
Amazon Builders' LibraryAmazon のエンジニアが、設計・リリース・運用の経験を書いた記事集分散システムの考え方を深めたいとき
AWS Skill Builder無料の講座と、実際の画面で手を動かす実習手を動かして学びたいとき
料金ページと Pricing Calculator何に対していくら課金されるか設計のたびに(第4章)

公式の資料を読むときのコツです。

コツ理由
まず「よくある質問」を読むそのサービスが何のためにあるか、何ができないかが短くまとまっている
「クォータ(上限)」の項目を読む設計の前提になる数字が載っている。この本では細かい上限を書かなかった
日付を確かめるブログ記事は古いことがある。ドキュメントのほうが新しいことが多い

名前や置き場所は変わることがあります。見つからないときは、サービス名と「AWS ドキュメント」で検索してください。

  • AWS でサービスを作る 31 ― おわりに:構成を考える思考の型
  • 13 / 16
  • 次に学ぶこと:公式の資料が、いちばん確かな教科書
  • 本
  • 公式ドキュメント
  • 検索
  • Well-Architected
  • 各サービスのユーザーガイドと「よくある質問」
  • 6本の柱の本文・レンズ・Tool(第28章)
  • ネットワーク
  • Architecture Center
  • 本
  • Amazon Builders' Library
  • 目的別の構成例(リファレンス)
  • Amazon の設計・運用の経験を書いた記事集
  • 学ぶ
  • AWS Skill Builder
  • 書類
  • 料金ページと Pricing Calculator
  • 無料の講座と、手を動かす実習
  • 設計のたびに、料金を確かめる(第4章)
  • 名前や置き場所は変わることがある。検索するときは、サービス名と「AWS ドキュメント」で探す
  • ひらめき
  • この本は「考え方」の入口。細部と最新の情報は、公式の資料で確かめる習慣を付ける。

資格を道しるべにする

学んだことを確かめる道しるべとして、AWS 認定(資格)があります。資格を取ること自体が目的ではありませんが、試験の範囲を見ると、自分に抜けている知識がよくわかります。

段階資格何を問われるか
1 基礎AWS Certified Cloud Practitionerクラウドと AWS の全体像、言葉、料金、責任共有モデル
2 アソシエイトAWS Certified Solutions Architect – Associate要件に合わせて、Well-Architected に沿った構成を設計できるか
3 プロフェッショナルAWS Certified Solutions Architect – Professional大きく複雑な構成、複数アカウント、移行、コストと信頼性の高度な判断

この本を読み終えた人には、アソシエイトが次の目標としてちょうどよいでしょう。アソシエイトの試験は、Well-Architected Framework に沿って設計できるかを問うもので、この本の第28〜30章がそのまま土台になります。IT の経験がまったく無い場合は、クラウドプラクティショナーから始めるのもよい順番です。

ほかにも、開発者向け・運用向け・セキュリティ・データ・機械学習など、分野ごとの資格があります。

試験の範囲・版・受け方・費用は、定期的に更新されます。受ける前に、公式の試験ガイドで最新の内容を確かめてください。

  • AWS でサービスを作る 31 ― おわりに:構成を考える思考の型
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  • 資格を道しるべにする
  • 学ぶ
  • 学ぶ
  • 学ぶ
  • プラクティショナー
  • アソシエイト
  • プロフェッショナル
  • クラウドの全体像(入門)
  • ソリューションアーキテクト
  • ソリューションアーキテクト
  • アソシエイトの試験は、Well-Architected に沿って設計できるかを問う。この本の第28〜30章がそのまま土台になる
  • 試験の範囲・版・受け方は更新される。受ける前に、公式の試験ガイドで確かめる
  • ひらめき
  • 資格は目的ではなく、抜けている知識を見つける地図。この本の次は、アソシエイトを目指すとよい。

学び方:小さく作って、壊して、消す

最後に、いちばん効く学び方をおすすめします。手を動かすことです。読んだだけの知識は、画面の前で止まります。

番号やることねらい
1 作る章の手順を、できれば IaC(CDK など)で作る消すのも作り直すのも楽になる
2 壊すサーバーを1台止める、DB を切り替える、AZ が止まった想定で試す第29章の練習を小さく
3 見るアラームは鳴った? ログに何が残った?第17章の監視が本当に働くか
4 直す戻るまで何分かかった?自分の RTO を知る
5 消すその日のうちに、全部消すお金の事故を防ぐ

手を動かすときの守りは、次の3つです。

守り章
予算アラート。決めた金額を超えそうならメールが届く第1・4章
練習用のアカウントを分ける(本番と混ぜない)第27章
MFA と、アクセスキーを作らないこと第1・3章

この3つがあれば、失敗しても怖くありません。むしろ、壊して直した経験は、本を読んだ経験より何倍も長く残ります。

おすすめの練習は、第30章の演習4(オンラインの小テスト)を、実際に小さく作ってみることです。設計した構成が、本当に数字をさばけるか。料金は見積もりどおりか。作ってみると、紙の上では気づかなかった困りごとが、必ず見つかります。そして、それを解く部品を選ぶ。この本で何度も回してきた輪を、今度は自分の手で回してください。

  • AWS でサービスを作る 31 ― おわりに:構成を考える思考の型
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  • 学び方:小さく作って、壊して、消す
  • ロケット
  • 電気
  • 折れ線
  • 更新
  • バツ
  • 作る
  • 壊す
  • 見る
  • 直す
  • 消す
  • 章の手順を IaC で
  • 1台止める・AZ を想定
  • アラームは鳴った?
  • 戻るまで何分?
  • その日のうちに
  • 守り:予算アラート(第1・4章)、練習用のアカウント、MFA。この3つがあれば、失敗しても怖くない
  • 壊して直した経験は、本を読んだ経験より何倍も長く残る
  • ひらめき
  • 読んだだけの知識は、画面の前で止まる。無料枠と予算アラートを守りにして、手を動かす。

おわりに:あなたの要件から、あなたの構成を

図は、第0章で「この本で作るもの」として最初に見せた構成です。あのときは、部品の名前を聞いてもピンとこなかったかもしれません。

今はどうでしょうか。

部品なぜ置いたのか
CDN(CloudFront)遠くの利用者にも速く配り、サーバーの負担を減らすため
ALB複数台のサーバーに振り分け、壊れた台を外すため
Web サーバーが2台1台壊れても止まらないため。混めば増やすため
DBデータをサーバーから分け、安全にしまい、壊れても戻すため
キャッシュ同じものを何度も読む無駄を減らすため
キュー・関数重い処理で利用者を待たせないため
S3写真のような大きなファイルを、安く、サーバーの外に置くため
監視壊れたことに、利用者より先に気づくため
守り攻撃を止め、誰が何をしたかを残すため

1つ1つの部品に、「なぜ置いたのか」を自分の言葉で言える。それが、この本のゴールでした。

そして、もう1つ大事なことがあります。この図は正解ではありません。第28章で見たとおり、正しい構成は要件の外には存在しません。友だち20人のフォトログならもっと小さく、100万人のサービスならもっと大きく、あなたの要件に合わせて形を変えるべきものです。

部品の名前は、これからも変わり、増えていきます。でも、「困りごとから考え、数字で比べ、理由を残し、見直し続ける」という型は変わりません。

次の構成を描くのは、あなたです。

  • AWS でサービスを作る 31 ― おわりに:構成を考える思考の型
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  • おわりに:あなたの要件から、あなたの構成を
  • VPC
  • 人々
  • フォルダ
  • サーバー
  • データベース
  • 荷物
  • S3
  • 利用者
  • ネットワーク
  • Web 1
  • DB
  • キュー
  • 折れ線
  • 監視
  • インターネット
  • ALB
  • サーバー
  • 電気
  • コード
  • CDN
  • Web 2
  • キャッシュ
  • 関数
  • 守られている
  • 守り
  • この図の1つ1つの部品に、「なぜ置いたのか」を言えるようになった。それがこの本のゴール
  • ひらめき
  • 部品の名前は変わっても、「困りごとから考える」は変わらない。次の構成を描くのは、あなた。

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